Amazonプライム・ビデオで映画『オーバー・フェンス』視聴。
本作も原作が佐藤泰志で函館を舞台にしています。
それにしても、『きみの鳥はうたえる』『そこのみにて光輝く』と同様、衰退都市としての函館で、いつもこんな描き方で函館の人から文句は出ないのでしょうか。
そんなことを思ったのですが、やっぱりアマゾンレビューには函館出身と思われる方による酷評がありました。
まあ、それは街そのものというよりは、登場する女性についてのものでしたが。
函館女性について、「ブス・股がゆるそう・頭が悪そうな話し方、雰囲気」というステレオタイプで撮ってないか?と。
言わんとすることはわかります。
でも、それは原作の佐藤泰志さんに向けるべき言葉なんじゃないかという気も・・・。
原作者の世界観として、なにか歯車が狂ってラインからはみ出てしまった人々への視線があり、そしてそれは一概に当事者たちの何らかの落ち度に因るものでもないという意思表明があります。
で、そういった諸々を映像化するのに原作者の出身地である函館が舞台化するのにちょうど良かった、ということでしかないはずです。
日本全体が衰退しつつあるとして、その兆候がよく見て取れる周縁部としての地方都市ですね。
確かに函館は衰退しつつある地方都市の一つかもしれませんが、本作含め映画で町おこしもしているわけで、本当の衰退都市なら映画にすらならないですぞ、と。
作品の中でも、自動車会社の工場が撤退して職を失った、という登場人物が出てきますが、よく考えれば函館にホンダとか日産とかの大きな工場があったとか閉鎖したとかいう話は聞きません。
なので、これは函館であって函館の話ではないですよ、と、件のレビュアーの方にも伝えたいところではありますね。
まあ、わかった上でのあえての文句でしょうけれども。
実際、「函館市を撮影して頂けた事を、大変嬉しく思います」と書いているので。
それにしても、蒼井優のメンヘラぶりがホンモノすぎて素晴らしい。
メンヘラに振り回されたことのある人だと、恐ろしい記憶がフラッシュバックしそうなくらいに。
そしてそれにふりまわされる、くたびれた中年になってもかっこいいオダギリ・ジョーがまた画になる。
それだけでもう映画としては反則レベルの出来栄えです。
少し知的障害のある青年を演じる満島真之介くんが、仲間の中で爪弾きにされる中で、少しずつ内に貯めていき最後に爆発する様も、普通の映画なら特筆すべき演技のはずですが、本作では主役二人の影として霞んでしまいます。
主人公が通っている職業訓練校で、月末にソフトボール大会が催される、ということが明らかになるあたりで、タイトルの『オーバー・フェンス』と絡め、結末はある程度読めてしまうのですが、そこは予定調和として。
エンディングに向けての、山下監督ならではの丁寧な積み上げを楽しむ作品です。
ストーリーで一つ不満を言うと、主人公が前の奥さんと会った点、それからそれをこっそり車から見ている蒼井優というシーン、あれはもう少し自然な演出でできなかったかなー、と。
そういうストーカー的な行動を含めおかしな女という演出なのだと言われればその通りなのですけれども。
不満はそれくらいです。
dTV、U-NEXT、Huluでも見られます。
コメント
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