Amazonプライム・ビデオで映画『岬の兄妹』視聴。
足が悪く、仕事をする上でもそれがハンデになっている兄と自閉症の妹の話です。
タイトルには「岬」とありますが、映像を見る限り「三崎」港です。
ただ、ストーリーがストーリーだけに、地名をそのまま使うのにためらいがあったのかもしれませんね。
確かに、佐藤泰志函館三部作にしたって、それぞれのタイトルにはそのまま地名が載っているわけではありません。
でも、その三部作に限らず、佐藤泰志作品の函館を舞台にした映画を見て、函館に行きたいな、とは思うようにはなりましたからね。
徹底して、衰退する日本の地方都市を描いてはいるのですけれども。
本作のストーリーは以下の通り。
父も母も既になく、兄の収入だけで暮らしていたところ、その仕事も失う。
代わりに始めた、ポケットティッシュに広告を挟む内職では到底生計は立てられず。
結局は妹に売春をさせるポン引きとしてお金を稼ぐ道に走る。
しかし狭い街なのであっけなく友達にその行為を見つけられ気まずくなるなど。
そうこうしているうちに妹は妊娠し、堕胎するならその費用もかかるわけで、いよいよお金に困る。
こうしてざっと書いただけでも、どうにも救いのない話です。
それに加えて、兄の行動のどうしようもなさや妹を含めた人間理解の薄さが一層本作にエグさを加えています。
例えば、妹の妊娠が発覚した際には、小人症の常連客に結婚してやってくれと懇願したり。
終盤に、もう一度兄を雇用したいと申し出る会社社長に対し、こうなったのはお前のせいだど毒づいてみたり。
警察官の友人から妹に売春をさせていることを咎められた際には、
「足が悪いんだから仕方ねぇだろ。」
と逆ギレ。
それに対し、
「お前は足が悪いんじゃなくて、頭が悪いんだよ」
と返されると、あっけにとられたような表情を見せますが、腹落ちはしていません。
作中、足が治った夢を見るほどにはそこにこだわりを持ったまま。
それでも、足が満足に動く状態になった夢の中でも、公園の滑り台や砂場で遊んだり、道を走ったりといった程度の夢しか叶えていないのが、また悲しいです。
頭が悪い、というのは、それほどまでに救いがなく、というか、頭の悪さは救わなくて良い、ということになっていて、これまた悲しい。
見ている側としては、もしこれが現実ならどうやったら福祉に繋げられるだろうかということを考えてしまいます。
同様の状況であれば、警察官をしている兄の友人だったり、妹を診察した産婦人科医だったりを通して生活保護に入るだろう、と見るのが自然といえば自然です。
でもそれはしない。
というかできない。
なぜなら頭が悪いから…。
本作に救いがあるとすれば、それでも兄は妹を捨てられないという点。
ただ、さっさと捨ててもらったほうが妹は救われたのかも、と思わせる程度には、救いがないお話です。
U-NEXT、Huluでも観られます。