羽田圭介『三十代の初体験』

羽田圭介『三十代の初体験』 評論

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羽田圭介三十代の初体験』読了。

著者の本を読むのは『ファントム』に続いて2冊めです。

今回はエッセイ。
取材の体にして今までやりたかったけれどもやらなかったこと、やれなかったことを体験しまくるという趣き。
何をやっても経費計上できる、というか雑誌の連載なので費用は出版社持ちですよね、これ。
美味しいなぁ、と。

この本で初めて知ったのですが、羽田さんの小説家デビューは17歳なのですね。
で、芥川賞の受賞が29歳ということで、それまで一体どうやって生活していたのか、と疑問が湧いたのですが、本書の中で、会社員生活もすぐに切り上げたこと、しばらく年収200万生活だったことを吐露していました。
本書は31歳から34歳の記録になるわけですが、人生が好転したのって本連載時点からするとつい数年前だったのですね、と。

自著の書影が印刷されたTシャツを来ながら路線バスの旅のテレビに出ていたのを見たことがありますが、そういう姿もその経歴を知ると微笑ましく見えてしまいます。
「本が売れない」と何度も書いています。
芥川賞だけの一発屋ではなく、テレビにも出てるし、コンスタントに小説も書いているし、雑誌連載もあるし、こういうエッセイ本も仕上げてるし、それでもこういう感想が出てくるというのは、「売れてない」というわけではなく、自分が想定していたほどの収入を得られていない、ということなのでしょう。
本書で、地味に「YouTuber」を体験したりしているあたり、心中お察し申し上げます。

なお、帯には「精神の微妙な変遷の記録」とありますが、本当に微妙な変遷です。
これまでの人生観が覆されるような圧倒的な体験をした記録とかではないので、肩肘張らずにさっと読み切るのが良い一冊。

あ、ちなみに私も色落ちした黒い帽子を『染めQ』で染めたことあります。

羽田圭介本

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