Amazonプライム・ビデオで映画『そこのみにて光輝く』視聴。
函館を舞台にした佐藤泰志原作の作品という点では、『きみの鳥はうたえる』と同じですね。
エンドロールに「シネマアイリス」とあったので、これも同じスキームで撮った映画でしょうか。
あと、池脇千鶴、高橋和也を起用していたので、あれ?と思ったのですが、『きみはいい子』と同じ呉美保監督作品でした。
それにしても、池脇千鶴も高橋和也も、『きみはいい子』での役どころとはまったく違い、役者さんというのはすごいものです(小並感
それから、少年院帰り、というか仮釈放中の荒ぶる男子を演じる菅田将暉がまた良い。
ああいう、誰ともつるめないタイプの非行少年の、突っ張って突っ走る感じがよく出ていますね。
こういった脇役に支えられながら、主役の綾野剛がもしかしたら一番存在感がなかったでしょうか・・・。
でも、アマゾンレビューを見ると綾野剛の裸を見たい人にはオススメ、みたいな書かれ方をしていて、まあ、そういう受け止められ方もあるか、と。
それはさておき本作は、『きみの鳥はうたえる』と同様に、函館という閉塞感のある街での物語です。
主人公はどうやら理由があってこの街にいるだけで、ここが地元なのではなさそうです。
しきりに海の街としての函館が印象付けられる演出ですが、途中でこれは山と海を対比しているのだとわかります。
綾野剛自身も「山より海」が良いのだと池脇千鶴に応えています。
その理由は、幾度となく彼に起こるフラッシュバックの映像で観客の側にも知らされます。
とはいえ、本作では海の美しさが描かれるわけではありません。
夏の物語なので、寒風吹きすさぶ冬の海の絵はありませんが、少なくとも観光としての海のシーンはありません。
この街で、地元のドンとして振る舞う高橋和也も、役所の仕事の差配などが権力の源泉で、経済が成長する中での分配ではなさそうなところが、先行きのない地方都市の風景を印象付けます。
冒頭に主人公である綾野剛に妹から手紙が届き、お兄ちゃんには家族がいないから駄目なんだ、みたいな安直な導入があるのですが、それを真に受けたわけでもないのでしょうが、物語中盤にはすでに池脇千鶴と家庭をもつことを決意していて、終盤はそこに向かうまでの障害とその解決に向けて動く各自の話。
そこに、なんとなく、歯車が狂ってしまった人々の、どうやっても元に戻らない感、それゆえの絶望感がこれでもかというくらいに描かれます。
その、うまくいかなさの原因を、高橋和也に「血」だと断じられたことへの逆上が、菅田将暉による殺人未遂事件につながるわけですが、それもまた、仮釈放中なのに再犯したどうしようもない奴という扱いに回収されてしまうという・・・。
最後、海沿いにある池脇千鶴たちの暮らすバラック小屋近くの砂浜で、あらためて向き合う綾野剛と池脇千鶴の表情は、それでも互いを受け入れて生きて行くしか無かろうよ、というものなのでしょう。
人生に対する諦念とも覚悟とも違うもので、たしかにここで作品を終えるしかないという幕切れでした。
Huluでも見られます。