山田康弘『戦国期足利将軍研究の最前線』

山田康弘『戦国期足利将軍研究の最前線』 評論

山田康弘編『戦国期足利将軍研究の最前線』読了。

非常にコンパクトにまとまった戦国期の足利将軍家の論文集ですね。
初学者向けに徹していて、深く知りたい場合はこの本を読むと良いよ、という紹介の仕方は助かります。
Amazonレビューには、これは「最前線」というよりは山田派の論集なんじゃないか、と言いたげだったものもありました。
足利将軍家の見方についての学問的な違いについては、先日の谷口雄太氏の『<武家の王>足利氏』で知っていたので、それはそれとして、楽しむことができました。

ただ、その書きぶりとか見ても、どこの世界もやはり党派性みたいなものは出てしまうんですね、という小並感。

ところで編者の山田氏の経歴について、本書では現職を「小山高等工業専門学校非常勤講師」とあるのですが、多分これは小山高専のことだと思うので、そうすると「小山工業高等専門学校」の誤植なんじゃないかと・・・。
高専って知名度がないせいか、結構こういうことやらかされますよね。
自分も、高専生だった頃には「あー、専門学校ですかー」みたいな反応をされるのは慣れっこになってました。
昔、研修旅行で予約した宿で、「歓迎」の立て札に「東洋工業専門学校御一同様」となってたときにはさすがに抗議しましたけど。
(当時は予約も電話なので、聞き間違えはあるにせよ、どれも合ってないという・・・。)

それはさておき、本書を読んでみて改めて室町時代というのは特異な時代だったんだな、と感じます。
とはいえ、そう感じてしまうのは江戸幕府・鎌倉幕府を前提として室町を見てしまうからであって、それはそれとして受け止めないといけないのかな、という気がしてきます。
例えばそれは、南北朝に端を発する朝廷との関係、そもそもの幕府の成立についてであったり、また、京都・室町の幕府とは別に、関東については関東公方を中心にもう一つの権力構造があったという点などですね。
逆に、江戸・鎌倉両幕府と比べても、そんなに現象としては大差ないので、もしかしたら明治以降の中央集権国家のメガネで見てしまうがゆえに、こちらが勝手に「特殊だ」としてしまっていることもあったりはしないかと、注意したいところもあります。
例えば、Amazonレビューでも直参の兵が少ないことについての解説が少ない、という書き込みがありましたが、江戸幕府であっても、旗本の兵だけで島原の乱を平定したわけでもないし、また幕末の幕府軍も自前で使える兵が少なかったことが、薩長に屈した一因でもあるわけですよね。
鎌倉時代の「いざ鎌倉」というのも、いざというときに来てくれ、というのは直属軍とは言い難いのではなかろうかと思うのですが、どうなんでしょう。
中央集権国家の徴兵制を伴った自前の兵の軍隊と比べてみるのはそもそも不当なのではなかろうかと。

ともあれ、直属の兵の多寡はともかく、自家の跡目争いで他家を巻き込んで実際に武力で闘っているというのも、没落していく要因ではあったのだろうことは、本書からも分かりました。
それに「将軍は自前の兵は少ないけれども他家の軍勢を使える動員力があったからその実力は大したものなのだ」という一連の説明があった後に、近江に出張って陣を敷いていたら、生活するのに厳しくて近習のものの多くが京都へ帰ってしまった、とか書かれると、結構トホホな感になりますね。

まあ、そういった矛盾を多く抱えているからこその近年の室町ブームなのだな、と納得できた一冊。

あと、喜連川足利家については、フィクションとはいえ、だいたいの流れは『足利の血脈』で知っていましたが、平島足利家については知りませんでした。

江戸時代には、人々に守り札を発行し、それがマムシ除けの効能があったとされる、などと聞くと、ほっこりします。
案外、足利家らしい平和の世での暮らし方と感じてしまったりもして。

室町本

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