映画『光』

映画『光』 評論

Amazonプライム・ビデオで映画『』視聴。

三浦しをん原作のほうです。
河瀨直美・永瀬正敏のほうではありません。

のっけからトラディショナルなテクノが耳を叩きます。
セリフとの音量の落差が激しくて、ヘッドフォン視聴でも結構辛いものがありました。
映画館で聞いたら、結構な迫力だったんだろうなー、でも誰が作ったんだろうなー、なんて思いながら、最後のロールに注目していたら、ジェフ・ミルズだったことに驚愕。
良いものを見せていただきました。
いや、聞かせていただきました。

自分が人生の中で一番聞いたCDは何かと訊かれたら、ミックスアップのジェフ・ミルズと答えるくらいには、あのミックスCDは聞き込みましたからね。
新宿リキッドルームでのプレイをそのままCDにしたやつ。
つなぎがズレたところを強引に修正するところとかを含めて凄かった。

思い返すと、1994年から1995年あたりというのは、日本においてテクノでも客が呼べるようになった年でもあるのでしょうね。
自分もリキッドルームで、アンダーワールドデリック・メイも堪能しました。
テクノシーンを、電気グルーヴというか石野卓球が引っ張っていった側面は強いですが、旧来のテクノファンとの間に、当初は壁があったようには思います。
ナゴムからの流れの電気グルーヴファンの女の子が、フロアで笛を吹いているのを冷ややかに見る図、みたいなのはたしかにありました。
でも、前年のジ・オーブが渋谷オンエアー止まりだったことを考えると、テクノのメジャー化はありがたかったですけどね。
あのときのジ・オーブも、基本的には「再生」したYMOのライブの前座で来ていたわけで、そうでなければ日本には呼ばれても無さそうで。
いや、当時前座にジ・オーブを指名した当人であろう細野晴臣の眼力に着目すべきだったでしょうか。
そういえば細野氏は、雑誌でサワサキヨシヒロ氏と対談もしてましたね。

話がズレました。
映画『』の話でした。

こちらは大森立嗣作品です。
先日『星の子』を見たからアマゾンにオススメされたのかな?という気はします。

過去の少年時代の犯罪をネタにゆすられる大人たちの物語です。
メインでゆすられるのが過去を切り捨てた女優(長谷川京子)だったりするところは、『砂の器』っぽい。
主人公(井浦新)の目がずっと死んでいて、これはまた殺るぞ、と思いましたが、予想通り。
一人殺すも二人殺すも同じみたいになってますね。
でも、『青い車』のときの無表情とは明らかに違う。
まあ、交通事故で彼女を失った過去を持つ男と、彼女のために人を殺した過去を持つ男とは、違って当然なのですが…。

直接的には女優と主人公を脅迫するのは、主人公の弟分(瑛太)ですが、彼もまた父親(平田満)から脅かされているという二重構造。
それを知った主人公は、弟分にその父親を殺させようと誘導します。
その手段を提供しつつ、自分は人を埋めるための穴を一生懸命掘っていましたが、どう見ても人一人を埋めるには深すぎる穴なので、最初から父子とも始末する気だったのでしょう。
そしてそれを、半ばは気づいている弟分。

過去のシーンは、表面上は「美浜島」という名の離島の美しさを描いているようでいて、弟分が少年時代から恒常的にDVを受けているシーンを挟むことで、現在の川崎沿岸部の工業地帯の風景とをつなぎます。

現在のシーンでも、既に眠っている父親に対して、
「俺たち、津波がなければもうちょっと幸せだったのかなぁ。いや違うな。その前からだもんな。」
とつぶやき、それを再確認させます。
彼らの生活の醜さの源泉はその島での生活にあって、突然襲ってきた津波ではない、とさせるのですね。
というより島でのエピソードは、これ以外にはさほど多くないです。

で、その島の美しさも醜さも、ある夜の津波で主人公の犯罪の痕跡を含めてきれいに押し流されたように見えて、実は消し去ってはいなかった、と。
そして、一見幸せそうな家庭を築いた主人公は、それを清算せざるを得なくなる、と。

ところで、女優と主人公、主人公と弟分、父親と弟分、それぞれの支配関係について、後二者は死によって清算されますが、前者は性行為でしか清算されていません。
最後、主人公が妻(橋本マナミ)と対峙するためには、死による清算はふさわしくない、ということだったのかな、と。
でも、せっかくその場を作ったのにもかかわらず、妻の表情には怯えしかないし、主人公の目は更に覚めきっているし、久しぶりにパパに会った娘は半狂乱だし、とにかく最後まで救いがありません。

三浦しをん作品

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