『ある夜、彼女は明け方を想う』

先日視聴した『明け方の若者たち』を、彼女側からの視点で撮ったスピンオフ。

アマゾンレビューで低評価が多いですね。
ただ、低評価なのは作品の出来ではなく、身勝手な彼女の振る舞いについてのものが主なもの。
まあ、これはスピンオフなので、「本編」を見ないとわからないことも多いはずです。
というかその内容を補完するための映像作品。
でも、補完されるのは観客の側だけであって、「本編」の主人公である匠海くんは、この事情を永遠に知ることは無いわけですが。
まあ、知ったら知ったで、思い出が汚されるだけなので、彼は知らないで良いでしょう。

彼女の側の事情から撮った本作を通じて観客が知るのは、結局のところ、匠海くんの、メンヘラ既婚者に振り回された３年間と、それを引きずっている数年間という総括になるわけで。

「本編」は、匠海くんの社会人になってからの行き詰まりにも軸足を置いた描かれ方になっているので、社会人になってからの数年間での挫折を含む青春譚として機能しているのですが、本作は不倫をしてしまった彼女の弁明と「マジックアワー」の感傷的な振り返りが主となります。
なので、どんなに美しく描いたとしても、多くに支持されることは難しいのは仕方ありません。

でも、彼女を責める気にはなれないのですね。
彼との最後は、けじめもつけているし。
会わずに音信不通とか、ＬＩＮＥやＳＭＳを一方的に送りつけてオシマイとか、ズルい女・弱い女ならそうしたはずですね。
でも、彼女はそうしていない。
一週間の音信不通はありましたが、匠海くんからのＬＩＮＥでの問いかけにきちんと応え、ちゃんと会って話して関係を終えている。

彼女を責めるとしたら、２０歳そこそこで、留学先で燃え上がった相手と、学生のうちに結婚を決めてしまったことでしょうか。
いや、そんな彼女に結婚を申し込んだ夫が問題なのでしょう。
３０歳になった自分の歳を鑑みてそろそろ身を固めたいとして彼女との結婚に踏み切ったのは、それこそ自分のことだけを考えたものではなかったでしょうか。
彼女がまだ学生であるとか、彼女のキャリアをどうするかとか、考えたことあったのかな？と。
夫婦での口論の最中には、彼女が就職活動をまともにしていなかったとか、何も考えてなかったじゃないかとか腐しておりましたが、本来ならそういう状態の子とはまだ結婚なんてしてはいけなかったんじゃないかな、と。
そんな彼女が大人になるまで、待たないといけませんよねぇ。
その間に気持ちが変わることはあるでしょうけど。
というかそういうケースがほとんどでしょうけど。

アマゾンレビューで、将来ＤＶ夫になるのでは、という意見がありましたが、私も同感。
少なくともモラハラ夫にはなりますよね。
ことあるごとに、浮気をした妻とそれを許した自分を盾にマウントを取りながら責めてくるはずですよー。
彼女にとっては、それはそれで地獄のような日々かもしれませんが、その都度、匠海くんとの日々を良き思い出として生きていってほしいな、と。
そう、「ある夜、彼女は明け方を想う」のです。

でも、彼にはもう二度と会ってはいけません。

まあ、私があまり女性の側を責める気にならないのは、身近に同じようなケースを見たからかもしれません。
なんだかんだ言って、留学先での出会いって燃え上がるんですねー（小並感

なんなんでしょうね、あれ。
で、その後はあまりうまくいかないケースがほとんどで・・・。