雨穴『変な家』読了。
本屋で平置きになっていて、話題の書なんだろうことはわかったのですが、手にとったときはクソ物件オブ・ザ・イヤー的な本だと思ったんですよね。
変な間取りの家を集めました、みたいな。
そうではなくフィクションの怪談モノでした。
出てくる家の間取りは3つ。
著者はYouTuberだそうですが、文章も登場人物のセリフのやりとりがほとんどで、話の流れも間取り図ありきのもの。
文学としてどうこうとか、文章の表現力がどうこうとかいう論評を軽く飛び越えてくる感じが、新しいですね。
この本は全4章で構成されていますが、ネットで第1章が公開されているとのこと。
これもマーケティングなのでしょう。
アマゾンレビューでは、YouTubeは楽しかったけれど、この本は期待はずれだった、といった意見が多かったのですが、多分読書のスピード感の問題だろうと思います。
実を言うと、著者のYouTubeを見たことは無いのですが(、というかYouTuberだということも知らなかったのですが)、その動画のスピード感と比べて、本を読むスピードが遅い人、色々考えながら、というか逐一確認しながら本を読むタイプの人にとっては、退屈だったり、少し構成が雑だったりとアラが見えてきてしまったりしたのかな、と。
確かに、終盤にすべてを知る人の一人語りで読者が謎を知るというのは、少し残念な展開の仕方ではありますが、それを含めてスピード感を持って読み進めるべき本です。
小一時間でいけます。
あと、鍵を握る人が、いろいろあった後に熊谷に住んでいるという設定が、なんとなく宮部みゆきの『理由』を思い出しました。
新幹線で大宮から一駅。
東京から離れてはいるが東北ではない、というのがこういう作品にうってつけの絶妙な距離感なんですかね。
都会ではないことは演出できるが、日帰りも無理なくできる距離、という。
秦野とか小田原に、そういう人が息を殺しながら生活している、という様はなさそうだもんなー。
あ、そういえばあの本も、競売不動産についての話だと思って読み始めたのでした。
実際それは扱う題材の一部でしたが、一部でしかなかったですね。
まあ、それでも十分楽しめた作品であるという意味では、本作と変わりませんが。