田村秀男・石橋文登 『安倍晋三vs財務省』読了。
田村さんと石橋さんの対談本です。
同じ新聞記者とはいえ、経済畑の記者と政治畑の記者ということで少し系統が違うわけですが、安倍さんを軸にすることでツーカーで話が進むあたり、安倍政権を語るならまず経済面から、ということだったことの証だろうと思います。
無論、対談が第二次安倍政権前夜のあたりから始まっているから、ということもあります。
アベノミクスの始まりと成果、そしてその後の失速も含めて、事情をよく知る二人の会話のキャッチボールで解説されます。
『安倍晋三回顧録』では安倍さんの言葉で財務省批判が語られていたわけですが、少し言葉足らずと言うか、背景がよくわからないところもありました。
ですが、本書を読めば経緯も含めて理解することができます。
なので、本書は便乗本というより、ちょうど良い補完本とでも呼ぶべきでしょうか。
まさに「安倍晋三vs財務省」だったのですね。
実際に「回顧録」を読んだ財務官僚が、石橋さんに「安倍さんは、どうしてあれほど財務省を敵視するんですかね」と訊ねたとのことです。
経緯を知る人間からすれば当然の報いだろうということであっても、とても一言では語れる内容ではありません。
でも本書を読めばわかるわけで、本書でその役人へのアンサーという意味合いもあったのかな、と。
それにしても、マイナス金利もYCCも消費税を上げたい財務省への黒田さんからの援護射撃だったと言われると、ため息が出ますね。
言われてみれば当然ですが黒田さんは財務省出身でした。
アベノミクスの弊害として指摘されることの多いこれらは、本来は必要のなかった施策で、少なくとも安倍さんが望んだことではなく、その後始末に苦しんでいる現状から見て批判が飛ぶのは残念ではなります。
とはいえ、本書を読んでもまだわからないのは、消費税を上げれば景気が冷え込み税収が減るだろうことは明らかであろうと思うのですが、それでもなお消費税率の引き上げを省是としている財務省の考えです。
いや、消費税だけでなく他の税も上げたいのですよ、と返されそうなのでますます絶望的になりますが…。
ここまで来ると、森永卓郎さんでなくとも「ザイム真理教」と揶揄したくなるのはわからないでもありません。
『安倍晋三回顧録』を読んだ人が背景を知るのに最適な一冊。