森永卓郎『ザイム真理教』

森永卓郎『ザイム真理教』 評論

森永卓郎ザイム真理教』読了。

実は本書を読み始めるまで「ザイム真理教」という言葉は、森永さんが考案したものとばかり思っていたのですが、どうも違っていたようです。
ネットで流行っているワードを拝借してきたとのことなのですが、それでもその「教義」やカルトぶりを解説するのに、森永さんは適任でしたね。

本書の前半は、森永さんが専売公社(現JT)に勤めていた時代の、大蔵官僚に虐められたエピソードを振り返っているだけとは言え、官僚たちのエキセントリックな行動の描写がこれでもかと続きます。
それだけでも在りし日の官僚の生態の記録として読むべき価値があります。
公社というのはソ連・チャイナ顔負けの計画経済そのものの予算組みだったのですね。
日本は世界で最も成功した社会主義国家である、とはよく言ったものです。
戦後のある時期までの日本の成長も、そしてその後の停滞も、起こるべくして起きたものか、と実感させられます。

まったく同じようなことが今も起きているとは考えにくいですが、ザイム官僚の頑迷さは、さほど変わってないのかもしれません。
その最たるものが財政の収支を合わせることが至上命題である点です。
森永さんはそれを「ザイム真理教」の教義と擬えているわけですが、そもそもこの命題はいつから真だったのでしょうか。
例えば世界恐慌の時期のニューディール政策は、高校生でも習うレベルの知識ですよね。
それを理解していれば、なにがどうあってもプライマリーバランスは黒にしなくてはならない、みたいなことにはならないと思うのですが…。
それに、震災後に復興増税だなんて、どんな論理構成でそういう考えに至るのか理解に苦しみます。

今では、大学受験時の点数ですら文2が文1を上回る年もあったり、そもそも官僚を目指す人間も減るなどしています。
とはいえ、でもそこでこの施策のレベルの低さは官僚の質が下がったからだみたいなところに論を落とし込むのは悪手なのでしょう。
森永さんは、財務官僚をカルトに取り込まれた信者と見立てて話を進めており、このあたりはうまいと感じます。
財務官僚でも若手は本音では、おかしいと感じているらしいと聞いた。
でも、出世に響くから表立って反論できないのだ、という話にしています。

自分はMMTの議論をよく知らないので、森永さんの主張がその界隈でどういう立ち位置なのかはわかりません。
しかし、日銀による国債引受は禁じ手ではなく、インフレは制御できる、という主張をしたいがために、アクロバティックな擁護をしているのは気になります。
日本での事例を紐解けば、真っ先に戦時国債の乱発からの戦後のインフレが頭に浮かびますが、森永さんの主張は以下の通り。

1935年と比べて終戦2年後の1947年の物価は109倍になっている。年平均の物価上昇率は43%だ。もちろん、高いインフレ率であることは間違いないが、ハイパーインフレと呼べるほどの上がり方ではない。

本書 P.68-69

いやー、十分にハイパーインフレじゃないでしょうか…。
もしかしたら、ハイパーインフレという語には数字での定義があるのかもしれませんけれども。

それから、現在の日本の財政の一番の問題は、社会保障費の増大であることには疑いの余地はありません。
けれどもあまりそこには踏み込みませんね。
社会保障費削減とか過剰医療・高額医療費問題とかそういう方面の議論はありません。
逆に高所得高齢者の医療費2割負担も制度の「改悪」という見地です。

一つには、森永さん自身が制度の恩恵を受けているということもあろうかと思います。
森永さんはすで末期ガンであることを公表していますがオプジーボなどの高価な抗がん剤のお世話にもなっているのでしょう。
ガン公表後のほうがメディア露出が多くなったような気もしますが、それも優秀な抗がん剤のおかげのように見えます。
そこで高額医療はとんでもない、とか、社会保障費はカットしなくてはならない、などという論陣を張れば、真っ先に「じゃあその闘病費用を自費で賄ってから言ってくれ」とブーメランが返ってくる話になりかねません。

あとは、国債の日銀引受による財政拡張路線を主張する方だと、インフラ整備の充実を求めるのが主流のように見えますが、森永さんはそれよりは、減税路線を主としているのは好感が持てます。
積極財政は、どの方面にその資金を投入するにせよ、無駄も利権も生じがち。
そしてその裁量権が財務省の権力の源でもあるわけで、それよりは減税一択というのは賢明です。
特に消費税はゼロにしてしまえ、というのは少し過激ですが、世に遍く効果ありそう。

だって、ねぇ。正直インボイスめんどい…。
記帳にかかる時間が倍近くになりましたよ。
消費税の税収なんて国全体の3割かそこらなのに、このめんどくささはどうしたものかと思います。
国単位で生産性を著しく減じているのではないでしょうか。

本書に関しては、いろいろと突っ込みどころはありますが、すでにステージ4の末期がん患者の方に先のことを考えさせるのは酷です。
逃げ切れる世代の意見なのだと言ってしまえばそれまでですが、本当に逃げ切ってしまえるだろうことが分かっている方なので、こちらも強く言えないのです。
お大事にどうぞ、とだけ。

でも、次に書いた本が日航機墜落の陰謀論なのはどうしたものか…。

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