土屋哲雄『ホワイトフランチャイズ』読了。
ワークマンの専務が書いた著書で、ワークマンのビジネスモデルが解説されているのかと思いきや、これ「ワークマンのフランチャイズになりませんか?」という広報本でしたね。
フランチャイズの説明会とかで配られるタイプの本でしょうか。
でも、だからダメというわけでも、読んで損した、とかいうことはないです。
というのは、いかに広報本と言ってもまったくの嘘は書かれないものでしょうから。
幹部の理念が末端にまで届いていないとか、幹部の綺麗事が現場の奴隷労働によって支えられているとか、そういう残念な組織はどこにでもあり得るでしょうけれども。
そういう意味では、末端たるフランチャイジーの再契約率が99%というのは恐ろしいほど高いのでしょうし、親を見て子どもが継ぐ事例とか、もしくは子どもが別の場所で自らワークマンのフランチャイズに応募するとかいう事例が頻発しているのは、それなりの合理的な理由はあるのだと考えるのが自然です。
だって、街を歩いていたって、コンビニが潰れる様を見ることは結構ある一方、特定郵便局が無くなる事例ってあんまり見ないじゃないですか。
特定郵便局をフランチャイズとして考えるべきかどうかという話はありますが、実体としては基本は世襲されていることを鑑みると、経営する側からすれば、郵便局はゆるいし、コンビニは厳しい、ということでしょう。
そんなことを考えながら読みすすめると、内容のほとんどは実際にフランチャイズで店長になった方の、仕事というよりは家族の物語の数々。
フランチャイズの本部の書いた本で家族の物語が続くというのも異様ですし、一方で自社製品の優位性などを説いた章が一つもないという・・・。
実際、職人さん向けのお店ということであれば、普段使う消耗品が揃っていることが重要で、素晴らしい製品を扱っているとかいうことは二の次ではありますけれども。
一応、店舗の売上データから仕入れる製品をリストアップする発注ツールについては自慢していましたが。
それでも、実際にその推奨されたリストの商品を仕入れるかどうかは各店長の裁量に任されているそうで、このあたり大手のコンビニとはだいぶ違いますね。
勝手にノルマ分の恵方巻きを仕入れさせられてしまう、みたいな話もなさそうです。
また、本社がその発注システムを開発した動機というのも、売上アップというよりは、何を仕入れるかを決める作業で店長の時間を奪うのが申し訳ないと思ったから、みたいな話だったのも、まあ、そういう社風なのでしょう。
気になったのは、職人さんが減り続けている中でワークマンのビジネスというのは斜陽だったりしないのか、という点でした。
リーマンショック以降、職人さんの数が激減していて、いまや慢性的な人手不足が騒がれているわけですよね。
公共事業を極限まで減らしたことで、一旦減った職人さんが戻ってこない、というか若い人が業界に入ってこない。
やはりどの現場に行っても結構な高齢者が多いのですよね。
あとは、外国人が補助に数人ついているくらいで。
でも、本書を読む限りは確かにリーマン・ショック後は厳しかった、みたいな記述はいくらかあるのですが、そこから需要が戻ってこない、みたいな話は出てきません。
もちろん、そういう地域の店長を選んでいるというきらいはありますし、なかには東北・熊本の震災後の復興需要で潤っているお店の話が複数あったりするのは取り上げ方としても恣意的かもしれません。
もちろん彼らも被災者であり、その「家族の物語」がストーリーにしやすかった、ということはあるでしょうけれども。
傍からは、このところ「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」という新業態にチャレンジしているのは、一人親方を始めとした職人さんをメインのターゲットにしたワークマンというビジネスモデルが曲がり角に来ているからなのかな、という印象を持っていたのですが、本書を読む限りではそういうトーンでは書いていませんでした。
まあ、仮にそういう事情だったとしても書けないかもしれませんが。
ちなみに、「ワークマン女子」という名称は、ワークガールとかワークウーマンじゃダメなのか、みたいなツッコミは当然ありますし、こんなの日本だけだ、みたいな言い方もされるんですけどね。
実はそんなこともないです。
香港にジョルダーノっていうユニクロのビジネスモデルの元祖みたいな企業があるんですけど。
というか、柳井さんはジョルダーノのビジネスモデルをパクったんだと思いますが、その彼らが、女子向けに付加価値の高いブランドを、というときに「ジョルダーノ・レディース」というブランドを展開したんですよね。
で、その後、その男性版も出す、となったときに、「ジョルダーノ・レディース・フォー・メン」という名前で出しています。
まあ、経緯を知っている人はその位置づけとかわかるんでしょうけどね。
まるっきり最初から聞いた人はわからないですよね。
それにくらべたら「ワークマン女子」は許容範囲かな、と。
まあ、次にあるとしたらフェミ勢からのワーク「マン」への攻撃でしょうかね。