映画『真っ赤な星』

映画『真っ赤な星』視聴。

主人公二人がどことなく佇まいが似ていて、暗がりのシーンでは見間違える程です。
正面から見た顔の作りはまったくの別人のはずですが、そのあたりも含めて演技の賜物だとすると恐ろしくもあります。
話としては、似ている者同士で惹かれ合った、という設定でしょうか。
でも、それはそれで危ういのですね。

14歳の陽が27歳の弥生に抱く思いは、彼女への憧れもあるでしょう。
でも、逃げ出したくなるような現実がそれを追い立てているようなところもあり、本当に彼女が同性愛者なのかは、これだけで判断するのは難しかろうな、という気がします。
ティーンエイジャーのうちに性転換をしてみたけど、やっぱり違うと気づいた、みたいな話がアメリカの事例でもありました。

一方の弥生の側からしても、今や売春婦となったからには寄ってくる男はすべからく自分を買いたいだけのクズで、そうではない存在が陽だけになっているのです。
思いを寄せていた賢吾は家庭持ちなわけで。

互いにそんな状況下での出会い・関係なのですが、それでも普通に同性愛の形として描くのは、今日的というべきなのかもしれません。
『マイ・ブロークン・マリコ』のようにそれっぽいところを匂わせつつも、女同士の友情として描き切る筋もあったとは思うのですが、あえてこうした、ということですね。

作品のかなり最初の方で、登場する車のナンバーから舞台が群馬だということがわかります。
出てくる空間が広いようでいて閉塞感がある感じが上州的です。
ラブホ代わりに車を使うくらいには日常的に車がある生活なのですが、それはこの閉塞感のある空間から抜け出る手段にはなり得ません。
どこかに海岸線でもあれば話は変わるのでしょうが、そういう抜け感がこの映像の世界観には存在しません。
海無し県というのはそういうものなのでしょう。

その手の役割を賢吾の趣味であるパラグライダーと度々登場する天文台が請け負うはずなのですが、翌々考えたら、パラグライダーは重力に逆らうことはできないし、天文台は地上からレンズで空を覗くだけなのです。
それではそこを抜け出すことはできません。
「湘南を舞台にした趣味のウィンドサーフィンで繋がった男女の関係」みたいなものとは、だいぶ違います。

最後のシーン、陽と弥生の二人は夕日を見ながら「このまま消えたいね」「うん」と言葉を交わします。
他の世界に逃げるという概念がないのですね。
ただ「消えたい」と。
残念ですが、そうだよな、そうなっちゃうよな、と絶望的な気分になったのでした。

Ｕ－ＮＥＸＴ、ｄＴＶでも観られます。