世の中には不倫をする人間としない人間がいて、不倫から始まった婚姻関係とはつまるところ、する人間同士の結婚ということになります。
なので、その婚姻関係がまた、不倫で終わったとしても驚きはありません。
というか自然の摂理。
とまあ、傍からはそう見えるわけです。
でも、当人たちはなにかに酔っているのか、悲劇の主人公を演じているかのような振る舞いになっていたりするので始末に負えません。
そんなイタい夫婦を門脇麦さんと田村健太郎さんが好演しています。
片や前妻との間の子との面会という嘘で不倫をする男、それを見ないふりをしながら自分も心を寄せる男と密会を続ける女。
物語中盤までの夫婦の寒い会話が真に迫っていて、見ているこっちの顔も歪みます。
まあ救いは無いわけですが。
二人が夫婦として向き合っていないことは、真正面に立ち目線を合わせて会話することがないことからも一目瞭然ですが、別に門脇さんは恋人である染谷将太くんとも向き合っていた感じもないのですね。
そもそもその恋人とは肉体関係もなかったようで、そっちはそっちで救いがないのです。
染谷くんとはどういう思いで逢瀬を重ねていたのか、そして染谷くんは門脇さんをどう思っていたのか。
でも、例によって染谷くんは常に目が据わったような表情で感情を読み取れません。
『きみの鳥はうたえる』(このときは寝取る側)、『パラレルワールド・ラブストーリー』(このときは寝取られる側)でもあったように、不健全な異性関係を前にしても感情をブレさせないタイプの男の演技ですね。
とはいえそれに対峙する門脇さんに「二人の男の間で揺れ動く女心」みたいな言葉を使うのはおこがましく、言うなれば自分の感情の赴くままに周りを振り回すだけの面倒な女です。
君、何度東京山梨間を往復しとるねん、という。
本人からすると、夫が浮気をしていたから私の心が乱れた、みたいなことになるのでしょうけれども。
実際終盤の夫婦での口論では、夫の不倫を詰っていて、夫に今その話はしていない、みたいな返しをされています。
ただ、そこでの口論で初めて互いが向き合って会話した体になるのが、また悲しいところ。
この際、作品としての秀逸さは脇において、こういう女には近づかないほうが良いですよ、という警告は立てておきたいです。
妻であっても恋人であっても、関わることでこちらのメンタルが削られます。
で、事前にそういう女かどうかの判断がつかないとしたら、ただ一つ、不倫をするような女はやめておけ、と。
それだけ守っておけば、大失敗はしないと思うのでした。
それにしても本作の監督・脚本を担当した加藤拓也さん。
長編映画2作目、まだ29歳だそうで末恐ろしいです。