X(旧ツイッター)での評判を少し見て、興味が出たので観てみました。
ただ、振り返ってみるとその評判と言っても土田世紀さんの原作についてのもので、「映画化したので楽しみ」というものがほとんど。
映像作品としての本作を称えているものは皆無だったことに先に気づいておくべきでした。
ええ。正直最後まで見続けたのがしんどくなるほど、まったくついていけませんでした。
吉沢亮・永瀬正敏・小栗旬といったいずれも主役級を揃えているのですが、作品の中ではそれぞれが交わることもないので、各自の家族事情だとか背景だとかが頭に入ってきません。
最後になってすべてが繋がる、とかいう作りであれば、もう一度見返して伏線を読み取る、みたいな鑑賞の仕方もあるし、なんならそういう見方ができることこそがVODの醍醐味ではありますが、そういったものもないのでどうにも対処に困ります。
案の定アマゾンレビューでも星1つが73%と散々な評価ですが、それも頷けます。
擁護するとすれば、原作は短編集だそうです。
それを映画化したとなれば、そのままでは話が繋がらないのは道理。
原作は「かぞく」というテーマに沿っての作品群だったのでしょうが、それを短編ではなく一つの映像作品とするからにはもう少しやりようがあったのではないのでしょうか。
例えば登場人物が行き交う街を同じにして、彼らが道ですれ違うシーンを何度となく作って、なんとなく違和感のないように繋げていく「きみはいい子」や「アイネクライネナハトムジーク」みたいな構成はありですよね。
ですが、本作はそういうものもありません。
シーンごとに場所も時系列もばらばらで、それも脈絡なく行ったり来たりしながらただただ暗い映像が続くのは、見る側としてはつらいものがありました。
登場人物それぞれの暗さの背景として、殺人・交通事故死・借金苦などがあるのだろうことは、少しずつわかってきます。
ただ、それを差し引いてもわからないことが多いのです。
そして、別に何かが解決するわけでもなく、解決しないことで何かを語るわけでもなく、とにかくだから何?という。
原作は評価が高いそうです。
多分に、マンガならではの吹き出しでの心情の吐露みたいなものが秀逸だったりしたのでしょう。
ただ、それはセリフに載らない限りなかなか映像では伝わらないのですね。
映像作品としての本作の数少ない高評価レビュアーも、原作を読んでからの鑑賞を勧めています。
なので、事前知識があればもう少し評価は違ってくるかもしれません。
それでも、原作を読んでから、もう一度本作を観る気にはならないなぁ…。