三木孝浩作品ですが、恋愛要素はゼロ。
池井戸潤さん原作の良質なバンカー成長譚です。
半沢直樹シリーズはいつの頃からか顔芸ありきのドラマになり、扱いもキワモノっぽくなってしまいましたが、本来の池井戸節はこっちだよなぁ、と。
2000年入社の行員がリーマン・ショック後の2009年には中堅どころの仕事をしていることには違和感はありますが、配役からするとこれくらいの時間軸でないと無理が出てしまいますからね。
主役は竹内涼真くんと横浜流星くんですが、ほぼ同時期に仮面ライダーとトッキュウジャーで世に知られることになったわけで、そんな二人が10年近く芸能界を生き抜き、まっとうな映画でW主役というのもまた良いですよね。
我々もまた、スクリーンを通して彼らの成長譚を見ている感があります。
現実に即して言うなら、自分は2001年入社の金融マンですが、リーマン・ショックのころはまだ泥水啜ってました。
なので、アマゾンレビューで散見される「若すぎて現実的ではない」というのはよくわかります。
自分もリーマン・ショックが来る前のファンドバブル時代には、ヒルズ族とかが六本木でブイブイ言っているのを横目に、業界選び間違えたかなー、なんて思っていたくらいにはまだ下積み。
業界の前線を張っている感はありませんでした。
一応本作のストーリー上でも、竹内くんは途中福山支店に飛ばされているので、順調にエリート街道を突っ走ってきたという設定ではないのですが、まあ、一度コースを外れた銀行マンが地方の支店一箇所で結果を出した程度で本部に戻ってこれるわけない、という程度にはお話の世界ではあります。
ところで、福山支店での訪問先の漁村のオヤジ役が竹原慎二さんでしたが、そのものズバリの広島弁で、まあこれは演技指導要らなかった口ですね。
それから、アキラ100%氏が登場した場面、劇場ではどんな感想が漏れたのか興味あります。
絶対に狙っての起用ですよね。
レビューには「アキラ300%やん」とかいう秀逸な突っ込みもありましたが…。
あとは銀行で主役二人の同僚というか後輩役で上白石萌歌さんが出演。
彼女は知性のある若手の女性役で(メガネ付きで)よく起用されますが、邦画界を見渡してもこういう枠で起用できる女優は案外少ないのかもしれませんね。
AKB系の人は、実際はともかく知性を前面に出す役には難しいでしょうか。
どう動いても(元)AKBという看板の後ろに秋元康の姿が見え隠れしてしまうので。
それはそれで別に考えないといけない問題かもしれません。
まあ、それらを含めて自分としては十分に楽しめました。
自分にとって許せないレベルの違和感はただ一点、2009年のニュース映像の設定なのに森永卓郎が痩せている、そこだけです。
U-Next、Huluでも観られます。