舞城王太郎『短篇七芒星』読了。
タイトルの通り短編が7本。
『群像』の2022年2月号初出、とあるのですが、この7作品が一気に掲載されたのですね。
連載で細く長く、とかではないのは、これくらいのアイデアはいつでも吐き出せるわい、ということなのか、それとも書き溜めていたものの中から要請された枚数分だけ作品を提出した、というものなのか、そのあたりはわかりません。
ストーリーはどれも独立していて登場人物がカブるとかいうこともないです。
各作品の主人公も、サラリーマンだったり男子中学生だったり女子高生だったりと千差万別。
作品ごとにフォントが変わっていて、これは著者の意向なのでしょうか。
すべての作品で違うのかどうかまでは、フォントに詳しくないのでわかりません。
似たようなものもあるのですが、ある作品とある作品でフォントを同じくしてグループ化、ということをする理由も思い浮かばないので、それぞれ違うフォントと考えるのが自然でしょうかね。
著者が「7種類のフォントで」という要望を出してそうなっている可能性はあるかもしれませんね。
一話目がホラー的な作品で始まったので、そういう話が続くのかな、と思ったのですが、そういう感じでもありませんでした。
どちらかというとスピリチュアルというか、オカルトというかそういう世界観の作品が多いですね。
一話目はあからさまに映画から着想を得たものでしが、もしかしたら他の作品も、読む人が読めば元ネタ的なものがわかるのかもしれません。
ただ、本書に出てくる作品は映像化したら陳腐になりそうだな、というものもありますよね。
股間から豚が出てくるとか石と交わるとか。
初めの方の作品では、ホラー的・オカルト的な趣きもありつつ一応は科学的な種明かしをしている一方、後半になるにつれスピリチュアル的な話で、そういった科学的にリーズナブルな解説みたいなものを放棄してしまったようなところがあります。
というか、徐々にそういう世界観に引きずり込むべく、最初に解説可能な作品を持ってきたのかな、なんていう気もします。
そういう意味ではまんまとその策にハマってしまった口です。
最後には生まれる前の世界とこの世界とを行き来するような話を、何の抵抗もなく読み進めていましたので。
個人的には四話目の「雷撃」が一番おもしろかったです。
石との奇妙な友情というか愛情みたいな話ですが、思春期になり目覚めるというある種の青春モノですよね。
自分のことをずっと思ってくれていた幼なじみではなく、中学で仲良くなった子を選ぶ、という話ですよ。
それにしても石は男なのか女なのかで悩む、というのが本人がまじめなだけにおかしさ倍増です。
あと、本書を通じて、登場人物がダジャレを言っては弁解する様が、登場人物ではなく著者自身が弁解している風に見えるところが、可愛らしいですね。
登場人物をいくら若めに設定しても、書いている著者はオヤジギャグを連発していておかしくない年齢ですからね…。