村田沙耶香 コンビニ人間

村田沙耶香 コンビニ人間 評論

村田沙耶香コンビニ人間』を読む。
最近の芥川賞だよなぁ、と思ったらもう4年も前の作品でした。
芥川賞を『火花』以前と以降に分けると、それよりは後だからこの作品は最近の部類、という理解はさすがに乱暴?

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著者は、発達障害のことを相当に研究したのだろうと思う。
で、発達障害を抱えた一部の人々は、健常者(この作品中では「普通」の人)に比べて自閉的傾向も強いが知能も高いということに気づき、そこに彼らと健常者との間の壁、彼らの生きづらさみたいなものを加えて本書の構想を練り上げたのではなかろうか。
あるいは単に身近でよく観察できる範囲内にそういう人がいたというだけかもしれませんが。

主人公は、健常者なら持ち合わせているはずの情緒・感情が欠如しているが、自分でも自分のその欠如を理解している、という設定。
良き妹の助けもあり、成長する中でその「理解」を獲得したことになっているが、実際の発達障害者がそう簡単に自身を客体化してそこまで理解できるかなあ、
という感想が浮かんだ。
そこは、健常者の書く発達障害者だからなのか、それほどまでに知能が高いのだ、という設定なのか。

本書の中で、主人公は周りの人間の感情について、共感はまったくできないものの、論理で対処することでそれを補うことは出来ることになっている。
その論理をあらかじめインプット出来てさえいれば、うまく場を回す、切り抜けることが出来る、と。

問題はインプットされていない感情や事態に遭遇したとき。
これまでは、ただ自分が押し黙ることで相手が勝手に想像を働かせてくれてやり過ごせたのに、なかなかそうもいかなくなる局面が出てくることで、物語の中盤の変化につながる。
そういう場を設定するため、主人公がそれまでも旧友と度々食事をしたり遊んだりしに出かけることが伏線として書かれているのだが、その点について、アマゾンレビューでも、なぜわざわざ昔の同級生との食事会に頻繁に出かけるようなことをするのか、という至極まっとうな指摘があった。

ええ、確かに発達障害を抱えた女子の行動としては不自然ですが、そうしないとお話が進まないですよ、
という感想を持ちましたが・・・。

また、その場での体験を通して、主人公はあちら側とこちら側の差を思い知らされる、みたいな流れになっているが、現実のその手の人は、そうなってもそのことをまったく気にしないか、あるいは過敏に反応しすぎたり、とかいう感じで、主人公のように場の中で孤独を感じて、落ち込んだりすることは無いのだろうとは思う。
まあ、それも作品として成立させるためのパーツでしょうけれども。

ところで、なぜブログ主が、そんなに発達障害の傾向がある人々のことをわかった風で語れるのか?
はい。当然に?私も私の子どもも、こちら側の人間だという自覚があるからですね。

さて、こういった一部の発達障害者の活用を考えたり、身内にその傾向のある人を抱えている向きに参考になるのは、
安間伸『高知能者のコミュニケーショントラブル: IQが20違うと会話が通じない』
安間伸『高知能者のコミュニケーショントラブル2: 人間は自閉的知能を持ったサルである』
の二冊。

前者の本には、「IQが高い人とは会話ができないという事実を理解した上で、コミュニケーションをうまくとることで彼、彼女らのポテンシャルを利用しよう」というフレーズがあるのですが、奇しくもこの小説で一つの解が示されている。

彼、彼女らを救ったのは、それを理解した上でのコミュニケーションなどではなく、コンビニという、売上を上げるためにそこに関わるすべての人間に極めて合理的な行動を求める職場、そしてそのためのマニュアル・行動規範が徹底している現場そのものでした。
一つ一つの指示、決まり、規則がすべてコンビニの売上を上げることへの最適解になっていることが、そのことを含めてすべて瞬時に理解できてしまうタイプの人間にとっては、とてつもなく快適な労働・生活環境だった、という形で。

そして主人公は「コンビニ人間」として生きることを覚悟して言う。

「気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」

前述の安間氏は、元々金融畑の人なので、この手の人たちを有効に活用することで、日本にもGAFAに対抗しうる企業・産業を興せるし、それによって経済を成長させようじゃありませんか、という方向へ論が進みがちなのですが、まあ、そこまで大上段に構えなくても、彼、彼女らを有効活用できる場所が身近にあるじゃないですか、というのが本書から得られる気づき。

ちなみに、本書に出てくる白羽さんは、垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』の資産家の御曹司薫に似てますね。
全然イケメンという設定じゃないですが。

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