Amazonプライム・ビデオで映画『星の子』視聴。
映画は2020年、原作は2017年の作品とのこと。
ですが、不幸にも公開当時よりも2022年の今現在のほうが、しっかり鑑賞されそうです。
主人公は宗教二世の芦田愛菜。
中3になり、それなりに外の世界のこともわかり始める頃。
一足先に気づいた姉は既に家出をしていて、ほぼ音信不通です。
現在のシーンと、家族が変わっていく瞬間を切り取った過去の出来事のシーンとが交互に進んでいきます。
両親(永瀬正敏・原田知世)の入信のきっかけは、生まれたばかりの主人公の体の弱さにあって、それを救ったのがその宗教の「命の水」的なものだったという設定です。
特別な水とか金星のエネルギーとか、怪しさが満載ですが、それを契機に一家はそれに嵌まり込んでいくのですね。
見たところ宗教とマルチがくっついているような感じもありますし、集会のシーンは成功哲学のセミナーでも似たような空気感はあったなぁ、と。
よく出来た洗脳装置というのは、区別がつかないものなのかもしれません。
一度それに嵌まり込んでしまった人間が、そこから抜け出ることの難しさとは別に、両親ともにそこに入り込んでしまっていて、それ以外の世界を知らずに育った二世が外界と遭遇したときの衝撃や、その世界との対峙の仕方についてが、本作のテーマと思います。
ですが、そこから先、そこを抜け出ることまでは描かれていません。
主人公の姉も、その家庭を出てはいますが、完全にその信仰からフリーになったとは言い難い描写です。
家を出た後、結婚をし子どもを設けたことを父母に連絡してきたことが終盤に明らかになりますが、自身が信仰からフリーになっているのであれば、子の顔を親に見せに来るくらいのことはあって然るべきです。
それが出来ないのは、もう宗教一家と関わりたくない、という意識に加えて、その家庭に立ち寄るだけでも、自分がまた信仰に囚われてしまうのでは、という危機感があるのでしょう。
姉は、過去のシーンで、主人公たちの叔父(大友康平)が企画した父母の脱洗脳作戦(ボトルに入った命の水を水道水に入れ替えて気づきを与えようとしたもの)に協力したものの、最後にはそれを糾弾し包丁を持ち出し叔父を家から追い出すという矛盾した行動をとっています。
自分の行動が理解できなかったのか、主人公に「わけわかんなくなることってあるんだね。」とこぼしていますが、事程左様に洗脳を解くというのは大変なことなのでしょう。
中途半端にそれを疑っている状態というのが、もっとも辛いのかもしれません。
主人公にしても、自分の家庭が他とは違うことには薄々と気づきつつも、どこがどのレベルでどう違うのかまではわかりません。
なので、宗教外の同級生の友達を通じて、どこまではセーフでどこからが異常なのかを試す場面が何度かあります。
そして、相手の反応から、それが異常であることを悟るとさっと会話を切り上げるなどして、それ以上関係が悪くならないようにするなど、主人公の立ち回りのうまさ、頭の良さが光ります。
でも、それらはすべて、彼女の置かれた状況を飲み込んだ上でのその同級生の優しさに基づいていたことが終盤に明かされるのですね。
宗教を毛嫌いする、教師役の岡田将生のヒステリックな対応とは対照的でした。
安倍元首相が亡くなって以降、世の中の反応はともするとこの教師のようです。
でも、二世の子どもたちには何の罪はありません。
そんな彼ら・彼女らとどう付き合っていくのか、どうやって受け入れてあげなくてはならないのか。
そんなことを考えさせられる作品でした。
自分自身は、幸いにして宗教ではこういう経験はありません。
けれども上述のように、成功哲学系の体験セミナーに、昔一度だけ参加したことがあります。
そこで同じような空気を味わいました。
当時流行っていた、流暢な日本語を話す成功哲学系の外人講演家のものですね。
そのセミナー自体は撒き餌で、その日の勢いで後日の泊りがけのセミナーに誘導する、というやつです。
別に海外に連れて行ってくれるとかではなく、千葉あたりのビジネスホテルでやるだけなのに100万くらい取るとのことで…。
体験セミナーのはずなのに、半分くらいがそのセミナーの経験者で、まあ、サクラの役割を率先して買って出ているのです。
作品の中でもありましたが、「交流の時間です。」といって、周りの席の人と会話をさせるのですが、右も左も、その泊りがけのセミナーの参加者ですからね。
「まだ、参加されてないんですか!」
みたいな感じで後ろめたさに訴えて来る目の怖いこと怖いこと。
その交流時間後に主催者が
「今、ここで決断された方は特別に○○円で参加できます。」
みたいなことを言って煽るところまでがセット。
「参加します!」と手を上げた人には、周りの人が拍手で「よく決断されました!」と称えるという。
白々としてすぐに帰ってきましたが、それは当時の自分には既に免疫があったからでしょう。
翻って宗教二世の主人公。
まだ15歳。
家庭では父も母も嵌まり込んでいて逃げ場がありません。
それでも、叔父から「高校へは叔父さんの家から通ったらどうだ。」と提案されても、拒絶してしまうほどには家族の愛を感じてはいます。
最後のシーンでも、家族との決別があるわけでもなく、何らかの未来を示唆するわけでもなく、ただ3人で夜空を眺めるだけです。
夜の森の中で家族3人肩を寄せ合い流れ星を探す。
世界がその3人だけだったら、どんなにか幸せだったかしれません。
dTV、Huluでも観られます。
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