『ライティングの哲学』

『ライティングの哲学』 評論

ライティングの哲学』読了。

著者は4人。
千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太(敬称略)。
元々ツイッターでのつぶやきから始まった企画とのこと。
鼎談2回の書き起こしと、その2回の鼎談の間にそれぞれが書いた原稿を収録した本です。

著書もある4人が、揃いも揃って「書けないんですー」と率直に語っていて、親近感が持てます。
書けない中でどういう工夫をしているか、どう書き上げているか、ということを各自見せ合う形になっています。
それぞれが残りの3人(と司会役の編集さん)に、自分はこういうことをやっています、というのを開陳しているので、過度にツールの話になることもなく、逆に精神論だけになることもありません。
こういうのは「私のライティング論」として一人で完結させるとドツボにハマるのでしょうね。
マニアックに過ぎる話が永遠に続く、みたいな。
鼎談として、相手の顔を見ながらお互いが語っているので、そういう独りよがりな話もなく、対話の中で思わぬ金言が生まれたりするのを目撃するなどして、これは企画の勝利ですね。

鼎談の書き起こしではあるものの、話題に登ったサイトやブログのQRコードが脚注に載っていて、こういう本は初めて見ました。
実際には自分はスマホでWebコンテンツを見ることはほぼ無いので、QRコードが印刷されていてもそれを活用することはなかったですが、ありがたいと思う人は多いでしょうね。
Kindleであれば、ハイパーリンクのクリックで済みますが、一般の書物でかなり長いURLなどが載っていても、なかなかそれを入力してそのサイトを確認してみようと思う人は少ないでしょうから。

テクニカルなところで言うと、アウトライナーの活用の仕方が人それぞれで、当然のことながら正解はないのだな、と感じた一方、自分としては実はどなたの使い方にも、「よし、これを参考にしてみよう」とはならず、そこは少し残念でした。
文章の骨組みのあれこれを色々考えながらアウトライナーでいじる部分と、そこからそれらを膨らませてそれぞれ文章化していく部分とを、どのあたりで切り分けるか、というところで各自違いが出てくる、ということなのでしょうが、しっくりくるポイントは人それぞれで、それによって使うツールも、そして使い方も変わってくる、ということなのでしょう。

Scrivenerというソフトが紹介されていたので、インストールしてみたのですが、ちょっとエディタとしては高級すぎて使いこなせなさそうです。
ここまでのものは求めていないのでEvernoteでいいんじゃないか、と思ったり。
ただ、Evernoteは同期を取るときに途中固まるのが、ゴリゴリ書いていく間合いとずれるのが嫌なんですよね。
あれはエディタとして使うのは少し厳しい。
結局今は、さほど大掛かりなものでなければ、秀丸の新規ファイルを立ち上げてそのまま保存もせずに書き上げて終了、という感じになっています。
落ちたときのことを考えると怖いこともありますが、そこまでの分量でなければそれで十分です。
もう少し構成が必要なものは、Dynalistで書いています。

昔、修論の執筆では、Wordのアウトライン機能で骨組みを作って、文章は別に立ち上げたエディタを使い、それぞれファイル化して保存、という結構ややこしいことをしていました。
本書でいうと瀬下さんのスタイルに近いですかね。
WorkFlowyScrivenerで書いているとのことなので。
Word+エディタよりも、エディタのファイル管理が要らなくなる分、こちらのほうが有利ですね。
というか、そういうニーズがあってツールが進化したのでしょうけれども。

論文執筆に悩んでいる人が、何か参考になる箇所が一つでもあれば儲けもの、くらいの心持ちで読むと良いかもしれません。

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