映画『佐々木、イン、マイマイン』

アマゾンからオススメされたのは、萩原みのり出演作品だからでしょうか。
『お嬢ちゃん』からの流れですね。

この作品では彼女は主演ではなく、主人公の同棲相手という役どころです。
すでに関係は終わっているにも関わらず同棲を続けているという、よくある話といえば話なのですが、そんな微妙な関係も上手に描かれています。
互いが向き合っていない様子だったり、噛み合わない会話だったり。

自分の周りでも、元カレと同棲している、というケースはいくらかありました。
皆一様に経済的な理由を挙げます。
つまり、この部屋で一人で暮らすとなるとふたりともキツイし、どこかに一人で暮らすにしても今の折半の家賃より高くなるし、それに出て行くとなると引越し代もかかるし、というような話です。
まあ、それは第一義ではないのは、本作で描かれている通り。
でも、本作での二人は、ちゃんと最後にはけじめをつけました。
けじめをつけられずにずるずると、でもどういうわけか子どもができちゃったり、なぜかその後結婚した、とか、本当にその子の親はその相手なの？とか、まあ、いろんなケースを見ましたけれども。
結局結婚してもすぐに離婚してたりとか。

それはさておき、主人公がスーツを着てバスの最後部座席に座っているシーンから始まったので、サラリーマンになった主人公が通勤途中などで過去を振り返る的なものかと思ったのですが、まったく違いました。
それにしてはなんでサンダル履きでリズムを取っているんだ、とか冒頭からもやもやしたまま、引き込まれていったのでした。
ちなみにそれらは最後の最後で全部回収されます。

俳優を目指して上京した主人公が結果を出せずに悶々としている東京での現在の映像と、主人公がつるんでいた「佐々木」を含む連中との甲府での高校生時代の日々の映像とが行き来しますが、甲府での映像の時間軸の進みのほうが速く、ラストで重なります。

甲府での日々が、圧倒的な「佐々木」によって彩られていて、そこで受けた影響を消化しきれないことが東京での失意の日々の原因だという設定に落とし込んでいて、ラストの重なりでそれが解消されるという流れ。
ついでに俳優としての主人公にも希望が見える形で作品が終わります。

主人公が売れない俳優という設定も、そこに展開が見える形での最後も、少し違和感があったのですが、本作の脚本が監督の内山拓也と「佐々木」を演じた細川岳の手によるものであり、なおかつ細川岳の旧友が「佐々木」のモデルであるということで、腑に落ちました。
彼自身の今後にとっても希望があって欲しいですね。

圧倒的な人間に出会って自分の限界を知り、それを自分の中で消化するのが成長と呼ぶのなら、誰にでも「佐々木」はいるのだろうな、と感じます。
その圧倒的な人間が、現在もなお眩しいくらいに輝き成功し続けている、というのではなく、衰退しつつある地元でパチプロをして最後は横死、みたいなところが、今日的です。

地方都市での高校生時代の圧倒的な人間を巡る描写は、『桐島部活辞めるってよ』とか『ここは退屈迎えに来て』的ですね。

ｄＴＶでも観られます。

追記）
内山拓也監督の初監督作品である『ヴァニタス』についても書きました。