映画『浅田家!』視聴。
中野量太監督による脚本のノベライズを事前に読んでおりました。
なので、作品の内容は概ね知っていたわけですが、このリズム感というかテンポは映画ならではのもので心地よいですね。
一方で、映画になってみると、セリフが浮いてしまうというかそのリズムに押し流されてしまうシーンもままありましたが、それらも軽くこなしながら鑑賞するのが正しいのでしょう。
ノベライズから省略されているシーンやセリフもありましたが、時間の制約もあったのかな、と。
前半は主人公である浅田政志が「家族写真」という金鉱を掘り当てるまでの物語。
そして後半は、自分が始めた家族写真撮影事業の最初のお客様が3.11の被災者だったところからの縁で始めた、被災地の瓦礫の中から見つかった写真を洗って持ち主に返還するボランティア活動でのエピソード。
震災でお父さんを亡くした少女の、「なぜ、家族写真にお父さんが写っているものがないのか」という問いが回収されるまでのお話を軸に進みます。
前半の主人公は、家族写真でやっていくと決めるまでは、写真の専門学校に入ったものの、卒業できないかもしれないレベルの不真面目さだったり、卒業後は実家でパチンコ三昧、2年経っても働きに出る気配もない、とかなりのダメ人間です。
でも、家族は皆、それを暖かく見守っているのですね。
元々、母が看護師、父が専業主夫、という普通の家族ではない、という意識が家族の中にもあったこともあるのでしょうが、本人が何かを見つけるまでひたすら見守り続けた家族がいたことで、「家族でコスプレ写真集」という出版ネタ・受賞ネタにつながったのですから、人生どうなるかわかりません。
後半は、菅田将暉くんが脚本で読んで想像していた通りの演技で素晴らしかったです。
親友を津波で亡くし、塞いだ気分を紛らわすために何かをしていたい、でもこの活動がそれなのだろうか、と鬱々としている被災地出身の学生(千葉大院在学中)と、それを乗り越えた8年後に故郷で小学校教師をしている青年との演じ分け。
8年後の主人公との再会で、授業中にも関わらず押しかけた主人公を二度見三度見してから大慌てて駆け寄ってくるシーンがノベライズにはあったのですが、映画にはありませんでした。
あれが見たかったんですよねー。
強いて言えば、そこが抜けていたところが減点でしょうか。
娘を亡くした悲しみをボランティアにぶつける北村有起哉さんの演技も、『オーバー・フェンス』での、斜に構えた職業訓練校生とはまた違っていて驚きました。
当初、画面を見ていても、しばらくは地元で協力をいただいたエキストラの方かな?と勘違いしていたくらいです。
浅田家のあの「写真集」を見て笑ったことのある人なら、楽しめる一本。
dTVでも観られます。