NHKスペシャル『東京ブラックホールⅢ 1989-90魅惑と罪のバブルの宮殿』を見ました。
タイムスリップでバブル時代に潜り込む設定のお話はよく見ますが、この番組シリーズは、当時の実写映像に山田孝之くんを重ねるという趣向で、それがかえって過去の時代だということを感じさせますよね。
本作が3作目ということですが、1,2はそれぞれ敗戦・前回の東京五輪の時代を扱ったものだったとのことですから、バブル時代もまた、それらと同様の「過去」になった、ということでしょう。
2007年に『バブルへGO!!』という映画がありました。
阿部寛・広末涼子・薬師丸ひろ子に劇団ひとりといったあたりがメインの配役でしたでしょうか。
ドーハの悲劇こそバブルから数年後のことではありましたが、その映画の中ではラモス瑠偉が本人で登場し、ディスコで踊っているところを、ヒロスエに「ロスタイムに気をつけて!」と言われて、何のこと?という表情をするシーンがありました。
つまり、ゼロ年代であれば、まだ、バブル当時の人に若作りなメイクをするくらいで再現Vは作れたのですが、2022年ともなるとそうもいかない。
なので、当時の映像に現在の俳優を最新技術で埋め込むことになった。
その結果、その時代が「過去」になったと感じてしまうというわけですね。
今回の番組では、バブル時代に魔性の女と呼ばれた女子大生(当時)のインタビュー映像はありましたが、さすがに50代の女性を使って女子大生時代の再現映像を作るわけにはいかなかったことでしょう。
ちなみにその女性、林真理子さんの『アッコちゃんの時代』のモデルになった人とのことです。
同様に、岸谷(当時奥居)香のインタビュー映像はありましたが、彼女に今更あの衣装で「ダイヤモンド」を歌わせるわけにもいきませんからね。
今、タイムスリップした先でプリプリと遭遇、みたいな絵を彼女自身を使って作るのはさすがに無理っぽい。
たまにクルマに乗っていると、彼女のラジオが流れてくることがありますが、基本的にもう「子育て中のお母さん」キャラでのトークです。
それにしても、バブルを代表する曲は、この番組でも「ダイヤモンド」。
そして、再現ドラマに登場したのは、平野ノラではなく伊原六花でした。
でも、バブリーダンスってバブルのときは無いですからね・・・。
番組の中でも、バブルのときにバブルと言う言葉はほとんど使われていなかったことが説明されていました。
バブルのさなかにバブルを警告した稀有な人として野口悠紀雄先生が、そして1990年の株価暴落の解説に元野村アセットの近藤駿介さんが登場。
「ウォール街のプレーヤーによるアービトラージによって売り崩された」という、語義通りに解釈すると?マークがならぶ解説ですが、あれはかなり端折っています。
近藤さんによる1989年の株価上昇と1990年のその下落についての解説は『1989年12月29日、日経平均3万8915円』に詳しいです。
純粋に株の世界の話だけなので、バブルの本筋は不動産だ、という人によっては物足りないかもしれませんが、株についてはこういう背景がありました、ということは知っておいて良いと思います。
これもまた、大蔵省の通達による影響が大きく、不動産での総量規制に並び、失政の類であったことは否めませんが・・・。
ほかにも、コロナ禍での現在との対比は、コロナは日本だけの現象ではないのでフェアではないなと感じつつも、あの時代のパワーを見習うべきだ、みたいな論調が見られたのが面白かったですね。
これまでは、バブルと言えば否定的に見るべきものの象徴でした。
子どもの頃に見たニュースステーションで、バブルが弾けて商売が傾いた銀座のママさんへの取材VTRが流れた後、久米宏がスタジオでニタニタ笑いながら「あれはバブルだったんだから。弾けたのは良かったことなんだから。」みたいなことを言っていたのを覚えています。
まあ、そういう風潮が少なからずありました。
それでも、米中ともにバブル崩壊を違うバブルを引き起こすことで乗り越え続けている様を見て、もはや30年以上前の一度のバブルを、当てこすったり引きずり続けたりするのは、流石に割に合わない考え方だということに、人々が気づき始めていることの証左かもしれませんね。
なお、劇中で山田孝之くんが、1989年に日本株投資を始めようとしている同僚のお金で、代わりにアップル株を購入してあげていた、というエピソードがありますが、アップルはアップルでその後ドットコムバブルでの株価崩壊あり、ジョブズが追い出される事件あり、倒産危機あり、なので、そんなバラ色じゃなかったような・・・。
というか、そもそも東証外国部での取引は停止になったはず。
とまあ、細かいツッコミは抜きにしても楽しめるNスペでした。
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