デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』

デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』 評論

デビッド・アレン『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』を読む。

GTDについて、色々なところで色々なことをきくものの、なんとなくイマイチ掴みきれていなかったので、原典というか創始者の本を読んでみました。
一応、この本がGTDの書籍としては最新版らしいのですが2015年の出版です。
GTDジャパンのサイトを覗くと、どうも書籍よりもセミナー形式でのマネタイズのほうが主になりつつあるのかな、という印象。
個人向けだけでなく、企業研修で社員がまとめて参加する、みたいなのが多いのかな?
いや、別に古い本だからダメ、とか、内容が時代に合わなくなっているはず、とか、そういうことを言う気はないのですが、こういう手合いのノウハウ本は、新しいことを知りたかったらセミナーに来てね、的な感じになりがちなので・・・。

しかし、「全面改訂版」と銘打ったこの本、どういうわけかAmazonレビューは芳しく無く。
ひどい誤植への激しい罵倒だったり、表紙カバーが気持ち悪いとか、デザインが醜いとか、あまり本質的でなさそうなところでのツッコミもあるのですが、本書を読んでみると、こういう感想が出てくるのも、意外とこれはこれでGTDらしいのかな、と。

意識高い系とか言って揶揄するつもりは無いのですが、こういう手法を学んで整理をしたい人はきちっとしたいわけですよ。
仕事においても人生においても。
ですから、GTDGDTとなっている誤植が数十ページも続いていたら、ねぇ。

ところで二見書房というと、我々の世代は心霊写真本でしょうかね・・・。
学校の休み時間とかに、ギャーギャー騒ぎながら見た記憶がありますけど。
うちの小学校は、漫画はダメだけど普通の本は持ち込み可、ということで心霊写真の本は、自由に持ち込めたのですね。
しかし、今日では、スマホでいくらでも写真が取れるようになったというのに、まったく心霊写真が増えてきませんね。
どういうこと?

話がズレました。

GTDの話でした。
自分は、メモ・書類の管理にはEvernote、スケジュール管理には、以前はNozbe、最近はTodoistを使っているのですが、どれも「Inbox」というものが一番上にあって、これが気になっていました。
もちろんこれは、メーラーでいうところの「受信ボックス」あるいは「受信トレイ」の援用なんでしょうけど、これらのアプリはメーラーではないので、別に「Inbox」である必要はないわけです。
別に「デフォルト」とかでもいいでしょうし、「基本」とか「初期トレイ」とかそういう名前であっても良さそうなのに、どのアプリも一様に「Inbox」としてあるわけですね。
どういうわけだ?と。
適切な日本語に出来ないので、やむを得ず「Inbox」にしているにしては思わせぶりな感じで。
何か理由はあるのだろうとは思っていたのですが、この本を読んでようやくわかりました。
このネーミングは、GTDから始まるこの整理術の流れから来ていたものだったのですね。

気になることはすべてとりあえず「Inbox」に投げ込んどけ。
まずは把握することからだ。
分析や論評はその後のステップだ。

というわけです。
そのとおりだと思います。
でも、現状を現状として認識するということが、結構難しかったりするんですよね。
知らず識らずのうちに、現状把握をしているつもりが、他人事のような批評になっていたりして。
いかんいかんと、振り出しに戻るわけですが。

本書では、ステップを細かく分けていて、

把握する
見極める
整理する
更新する
選択する
プロジェクトを管理する

となっています。
すべてをマスターするのは大変そうですが、これを意識することで、把握のつもりが論評へ、みたいなことが起きる頻度は減るのかな、という気も。
ただ、本を読むことでそれをマスターできるのかというと、それも結構難しいのでしょう。

本の中では、このステップ・区分のこなし方についてかなり懇切丁寧に解説がされていますが、多分に著者が様々な人にコーチングをする中でうまくいったケース、いかなかったケースを思い浮かべながら書いていることが端々に伺えます。

この本のAmazonレビューで、冗長・分厚い・イマイチ、という言葉が散見されるのは、著者のあれも伝えたいこれも伝えたい的なところが前面に出てきてしまっているところがあるからなのでしょうね。

こういう人にはこれ、そういう人にはそれ、みたいなことは、コーチングの際に適切なタイミングで声掛けする分には良いのですが、読む人のためにと、それらのすべてを書物に落とし込んだら、読む側は消化不良を起こすのは当たり前、ということです。

じゃあ、セミナーを受けろということなのか?というと、自分は別にGTDジャパンの回し者ではないし、セミナーを受けたこともないので、なんとも言えませんが、大人数向けのセミナーなら、状況は本を読むのと然程変わらないだろうな、とは思います。
高揚感は得られるでしょうけど。

自身でビルドアップさせていくのでないとすると、こういうノウハウの伝達は、基本は一対一のコーチングということになるのでしょうね。
そしてそれにはかなりの費用がかかるので、著者の対象となる顧客も、本書でも少し触れられていますが、投資銀行家とかそれこそGAFAの幹部だとか、そういう方面が主になってくるのでしょう。

全社挙げて社員総出でセミナーに参加しました、とかいう形で、各人が習得し組織が機能するようになるとは、到底思えないわけです。
それだったら、全員にこの本を渡すくらいのほうが、コスパ的にはよろしいのではないかと。

でも、それでは商売的にはおいしくないので、書籍としての出版は2015年で更新が止まっているのかな、と。

そんなことを考えた一冊。

デビッド・アレン本

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コメント

  1. […] 前回、『はじめてのGTD』を読んだので次は『ひとつ上のGTD』です。注意しておかないといけないのは2点。一つは、前回読んだ『はじめてのGTD』は「全面改訂版」[2015]なので、出版年としては今回の『ひとつ上のGTD』[2010]のほうが古い、ということになる点。もう一つは、一応日本版では三部作となっているらしく、『ストレスフリーの仕事術』[2006]なる本が二番目の本となっているらしい点。なので、読みとしては一足飛びにはなってしまっているのですが、そちらを後回しにしたのは、気分的に、「まあ今さら仕事術でもあるまいな」、という気持ちがあったからです・・・。 […]

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