上映時にTwitterで映画のCMを見た記憶があります。
失踪というか背乗りというか、戸籍入れ替わりのお話とのことでしたが、そのCMでは当該の「ある男」でもそれに振り回された女でもない妻夫木くんの映像がメインで流れていて、どういうお話なのかと不思議に思った記憶がありました。
今回作品を見て納得しました。
実際にはその「ある男」を追う男の物語なのですね。
そしてこの主人公は在日コリアンの三世という設定です。
すでに帰化はしているものの、妻の実家とはその家が裕福だというだけではないところで断絶というか壁というか、そういうものを感じながらの日々、というサイドストーリーもうまく混ぜているのでした。
それを強く意識させるものとして、詐欺で服役中の男に口汚い言葉を吐かせるのですが、その役を演じる柄本明さんが凄すぎてすべてを持っていく勢い。
登場は2シーンだけなので、多分、撮影も一日で済ませているんだろうと思うのですが…。
ほんとコスパの良い端役です。
ただですね。
面会に来た妻夫木くんにいきなり
「在日でしょ?顔見りゃ一発ですわ。」
なんて言葉を投げつけるのですが、妻夫木くんにはそんな特徴は感じられないので、まあ、そこだけは違和感です。
映画なんだから別にいいじゃないかという話ですが。
原作とは異なり、戸籍を騙られた男(仲野太賀)の偽Facebookアカウントを作るのは、騙った男(窪田正孝)の妻(安藤サクラ)ではなく騙られた男の元カノ(清野菜名)なのですが、これはこれでサブストーリーとして素晴らしかったですね。
そのアカウントに騙られた男からの脅迫メッセージが届くことで二人の十数年ぶり?くらいの再会につながるわけですが、その間ずっと彼を待ち続けていた・探し続けていた風の設定の清野さんの演技といい、戸惑いつつ情けない表情しか出来ない仲野くんといい、それだけで見せ場を作っていました。
旅館の跡継ぎとして申し分のない兄(眞島秀和)と常に比べられていた苦しみから逃げてしまった男と、その苦悩も全てわかった上で泣き笑いで再会を喜ぶ女の図です。
これに限らず、有望な若手ボクサーに逃げられたジムの会長(でんでん)然り、トレーナー然り、ボクサー時代の窪田くんの当時の彼女(河合優実)然り、何というか登場する人物すべてに人生が見えるお話でした。
ちなみに妻夫木くんの妻役は真木よう子ですが、至って普通に演技しています。
いや、あの、最近は彼女に関してはエキセントリックな映像しか見ていないので…。
まあ、2022年時点では普通だったんだな、という。
いや、演技上は、というべきなのかもしれないですが…。
U-Next、Huluでも観られます。
コメント
[…] 前回の『ある男』が戸籍が入れ替わった男の話なら、今回はそもそも戸籍のない女の話。彼女が無戸籍であることについては、当然に本人に過失があるわけではないですし、親を含め環 […]