読売新聞社会部「あれから」取材班『人生はそれでも続く』読了。
読売新聞の連載「あれから」をまとめたものとのこと。
連載は、ニュースになった人々のその後を追うルポ企画だそうです。
昔、朝日新聞でもこういう連載があったように記憶しています。
ツービート以降のビートきよしとか、松方弘樹との間の子どものことを赤裸々に綴った千葉マリアとか、そういうディープな人ばかりでした。
でも、今でも覚えているくらいなので、子どもながらにインパクトは強かったのでしょうね。
読売のこの連載は今も続いているのだそうで、本書も結構新しい出来事の人々が収録されています。
いや、新しいと感じるのは、それだけ自分が歳をとったというだけかもしれませんが…。
多摩川のタマちゃんを見守る会のおじさんといったどうでもいい人から、妻子を皆殺しにされた男性といった救いのない人まで、脈絡が無いといえば無いのですが、それでもなお共通点を探した結果が、「人生はそれでも続く」なのでしょう。
プロレスについてはしばらく疎くなっていたので、三沢光晴に最後のバックドロップをかけたのが齋藤彰俊だったというのを本書で初めて知りました。
どうも、齋藤彰俊という人については、小林・越中との抗争から、一転して一緒に組んで平成維震軍に至ったあたりで記憶が止まっていましたからね。
本書では、誠心会館に入るまでのエピソードなども簡単に触れられていて、当時では知ることのなかった彼の人生も知ることが出来たのでした。
あらためてプロレスって経歴も含めて何でもありの世界だな、と好意的に捉えたいです。
新日を脱退したエピソードについては、本当かなぁ、と思うところはありますけれども。
他には、千葉大に飛び級で進学したものの、今はトラックの運転手をしている人が取り上げられていました。
そういう人がいるというのは、ツイッターで以前見たことがあります。
多分連載期間中にすでに話題になっていて、自分のTL上にも流れてきたのだと思います。
結婚もして子どももできるなか、研究職だけでは暮らして行けず、お金に困ってトラック運転手になった、ということです。
一週間に一日くらい予備校講師をしながら生活費を稼ぎ、その時を待つ、という研究者の卵の王道も、今では厳しいのかもしれないですね。
予備校の理系科目の講師とかって、自分らが受験生だった頃は、明らかに社会不適合者みたいな人が多かったですが(暴言)、それでも研究者の卵だしな、みたいなノリで生徒も雇用主も暖かく見守っていたようなところはあったと思うんですよね。
予備校という一番結果が求められる世界の仕事のはずなのですが、上のクラスになればなるほど、変人でも講師が勤まるようになってくるという矛盾。
でも、今では当たり前ですが結果を求められ、もう少しラディカルに効果を測定されたりするのでしょうかね。
で、コミュニケーション能力に難があったりする人材が、こういった少しチート的な職で生き残る道も塞がれてしまっているというか。
ちなみに、自分が昔勤めていた先にも千葉大飛び級入学の子が入社してきましたが、普通にサラリーマンしていました。
なので、飛び級をしたから社会生活を送れないとかいうわけではもちろんありません。
むしろ21歳で大卒就職なので、生涯賃金的には有利?
アマゾンレビューを覗くと英文の書き込みがあり、翻訳もされているのかな?と思ったら、本書に登場している一人、マリアンヌ・ウイルソン黒田さんでした。
自身が取り上げられた本書を、贈り物に使っているとのことで、自分の昔のことをいちいち説明するより本を差し上げたほうが理解してもらいやすいということなのかもしれません。
自分の苦労話を自分で言うのは、気恥ずかしいですからね。
企画の勝利な本で、どれがいいとかどれが悪いとかいうことはできない一冊。