プライム・ビデオで映画『ヒノマルソウル』視聴。
田中圭&土屋太鳳という『哀愁しんでれら』と同じペアですが、中身は全く違います。
本作はおどろおどろしい要素は限りなくゼロのスカッとスポーツ系邦画です。
それにしてももう26年も前になるのですね。長野五輪。
その前のリレハンメルからは30年ですよ。
荻原健司がその長野の市長になるなんて誰が想像したでしょうか。
いや、それを言ったら馳浩が県知事ですよ、なんて。
でも、普通の人間なら疲労で倒れてそうな激務でしょうに、震災後一ヶ月経っても意外と平気な顔して仕事ができている馳さんを見て、やっぱりプロレスラーは体の鍛え方が違うな、なんて、変なところで感心したり。
のっけから話がズレました。
長野五輪の映画のお話でした。
本作はスキージャンプに絞ってのストーリーですが、主役を船木でも原田でもなく、西方仁也さんというテストジャンパーに置いたのが秀逸。
単なるスポ根ものではない深みのある作品になっています。
冒頭は長野五輪でのスキージャンプラージヒル団体での原田雅彦の一本目。
そこに田中圭さん演じる西方さんの「落ちろ。」という声がかぶさってきて、どういうこと?と引き込まれます。
そこから彼がそういう思いを抱くに至った経緯を振り返るわけですが、伏線はその四年前、リレハンメルでのあの「事件」にあるのでした。
リレハンメルの団体では、最後に原田が失敗して日本は金メダルに手に届かなかったわけですが、そのときのメンバーの一人が西方さんだったのですね。
そこから当然に四年後の地元開催(西方さんは長野出身)での五輪でのリベンジを目指す日々が続くわけです。
しかし、一見すると順風満帆の成績を出し続ける原田とは違い、新星船木の登場や本人の怪我の影響もあり結局代表選手選考からは漏れます。
それでも、引退後のキャリアを鑑みたコーチの勧めもあり、テストジャンパーとして長野五輪に参加することとなります。
そのあたりもテンポよく進みますが、時の流れが彼の子どもの成長で追えるのが良くできていますね。
リレハンメルのときには奥さん(土屋太鳳)のお腹の中にいた子どもが、長野五輪時には3歳になっているのです。
このテンポの良さで、代表落ち後の悶々とした日々もあまり深く取り上げないのも良いですね。
酒に逃げたシーンのいくつかでさっさと片付けていますが、本作の主眼はそんなところにはないという意思表示でしょう。
そして本番当日のあの日、天候も流れもそしてそこからの日本金メダルも、なんか出来すぎな感がありますが、実話を元にしたストーリーであることは映画の一番初めに画面に明記されるし、実際記憶を手繰ってみても、確かに途中悪天候で中断したよな、とかなぜか金メダルが確定した頃には晴れてたよな、とか、そこに違和感はないのでした。
つまり、あの日の出来事は、そのまま映画にできるほど現実が現実離れしていたということですね。
いや、当時あの競技をテレビで見ていた自分は、最後は船木じゃなくて原田で行くべきなんじゃないかと思ったりした記憶もあり、自分らはよほどあの現実をドラマ以上のドラマを求めて見ていた節もあります。
その裏ではこんなストーリーもあったのだということも知らずに。
まあでも、あの場面、最後が原田だったらやっぱり失敗してたんじゃないかという気もして、順当に最後を締めた船木の強心臓に驚かされたものでした。
あとは、作中で聴覚障害のジャンパー役の山田裕貴くんが良いアクセントになっていました。
その角度だと読唇術できてないだろ、というツッコみたくなる場面はいくつかありましたし、ひたすら前向きな障害者というありがちな設定ではありましたが、演技力で全力カバーできてましたね。
スキー好きにもそうでない人にもオススメの一本。