ドラマ『ハイポジ 1986年、二度目の青春。』視聴。
2020年のドラマですが、漫画の原作は2017年にマンガ誌に連載されたものだそうです。
お話の中では2016年に46歳の主人公が30年前の1986年の16歳の体にタイムスリップします。
1986年というくらいなので、てっきりオメガトライブが前面にフューチャーされているのかと思いきや、まったく使われておりませんでした…。
オメガトライブは海とか渚の雰囲気が強すぎて、高校生活の描写で使うのは少し難しかったですかねー。
あの頃のニューミュージックにありがちな、よく聞くと歌詞に中身が無い、というのもありますが。
各話とも、話のタイトルが往年のヒット曲のそれ。
年代が結構バラけていて、ツッコミどころはあります。
ロスジェネの自分でも十分に楽しめましたが、作品としてはバブル世代の最後くらいの人の青春のやり直しみたいな感じでしょうか。
80年代の後半を高校生として過ごすので。
自分らはこのころはまだ中学生でしたから、バイトもできませんでした。
そのころの時給は作品で出てくるよりも、もう少し高かったんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
本作のタイトルのハイポジはもちろん、カセットテープのハイポジから。
仲間と貸し借りをするのにノーマルじゃちょっと、という感じの中二病に最適なちょっとかっこいいハイポジのテープ。
半透明のテープとかありましたよね。
自分はオトキチだった父親からは「クローム」と教わっていたのに、クラスの奴らがハイポジというので次第にハイポジと呼ぶようになりました。
でもそんなのは中学生くらいまでですかね。
すぐにCDですら携帯できる時代が来て、MDの時代は一瞬で終わり、その後ゼロ年代に入りiPod的な再生機がやってきたかと思いきや、スマホがすべて持っていきました。
本作にはタイムスリップものにありがちな、世の中の歴史を少し変えてしまう、という大層なものが一切ありません。
東京郊外の地味な高校生の日常が少し変わる、といった程度。
「(BOØWYの)ギターの布袋と(吉川)晃司が組むことになるよ」とか、「明石家さんまと大竹しのぶがリアルに結婚して子供の名前はいまるだよ」とか、未来人ならではの小ネタで周りを笑わせる程度なのですね。
地味で冴えなくて何の思い出もなかった一度目の高校生活を振り返り、これはどうせ死ぬ前の走馬灯、夢なのだからと少し積極的に振る舞うことで少しずつ変わっていく二度目の高校生活。
確かに両手に花の状態にはなり、楽しい生活は送れたものの、だからといって将来が変わるほどの手応えもなく。
最終話の前、第11話では幾度となく2016年に戻るのですが、ホームレスになる世界線だったり、子どもを作らなかった人生の世界線だったり、何のためにやり直した?感がありあり。
そして最後に戻った世界線はというと、表面上は従来の人生から何も変化がないものでした。
その世界線のまま最終話は進み、一度もタイムスリップしません。
ただ、二度目の高校生活を回想シーンで振り返りながら、人生を見つめ直します。
そして、一度目の高校生活では憧れの存在のまま会話をすることもなかったものの、二度目の高校生活ではたくさんの思い出を作った女の子と再会するところでエンディング。
第一話でその女の子に勇気を出してアタックしたときの言葉、ウォークマンで音楽を聞いている彼女に「それ、何聞いてるの?」からの、彼女の「聞く?」のやり取りが、最後で見事に回収されています。
エンディングでの彼女の様子からは、主人公の二度目の高校生活でのやり取りを踏まえている世界線ではあったようです。
つまり、40代半ばで離婚とリストラという目にあった主人公が、事故を機にタイムスリップをして過去をやり直すのだけれども、やり直した結果としては離婚もリストラも避けられていません。
でも、過去の思い出を糧に新たな人生を前向きにスタートするというところで物語が終わるのです。
このエンディングに、渡辺美里の「MY REVOLUTION」が染み入ります。
何度人生をやり直したところで、何かが変わるわけではないかもしれないけれど、自分が変わることでこれから先の人生は変わるかもね、という寓意でしょうか。
もう「夢を追いかける」歳では無いのですけれども…。
U-NEXT、Huluでも観られます。