永濱利廣『日本病』

永濱利廣『日本病』 評論

永濱利廣日本病』読了。
副題が「なぜ給料と物価は安いままなのか」で、問題意識としては中藤玲安いニッポン』と同様でしょうか。
失われた30年を経て、他国、それも先進国のみならずアジア諸国と比べても、給料も物価も安くなってしまったのはどうしてだろう、というものです。

安いニッポン』は日経の記者さんが書いたものなので、多少ジャーナリスティックに、種々の現場的な事例を挙げていました。
もちろん、極論を言っているようなところもあり、例えば本の帯にある(カリフォルニアでは)「年収1400万円は低所得」とか言うのはその最たるものでしょう。
とはいえ、事例を積み重ねた上で、モノよりサービス、つまるところ人件費の安さが日本の停滞の原因ですよね、というところまで追っています。
でも、どうすれば現状を打破できるか、という主張まではありませんでした。
ある意味、言いっ放しのところはありましたが、新書なんだし新聞の特集のノリで十分良いですよね、という感想を当時書きました。

本書の著者はエコノミストということもあり、同じ問題意識でも、もう少し踏み込んでいます。
でも、その前になぜこんな状況になってしまったのか、というところの解説にかなり紙幅を取っていますね。
90年代のバブル処理からの度重なる失敗をあげつつ、結論としては財政支出が不十分であったという点と、デフレ脱却が軌道に乗る前に消費増税をしてしまったから、という点を挙げています。
いずれも、日銀の失策だけでなくそれとなく財務省の緊縮財政路線をディスっているわけですけれども。

自分は経済学徒ではないので、この手の主張の正当性はどの本を読んでも正直判断つきかねます。
ただ、国家の債務というのもあくまでも名目なので、現在の名目での規律にこだわるのは、それこそデフレマインドだとは思います。
別にハイパーインフレでなくても、インフレが継続する限りにおいては実質の債務も減り続けるというのは、民間レベルでもアベノミクス下での不動産投資家が皆実感したことでした。
そして、多分マイルドなインフレ下が続くなか、海外の不動産投資家とかはずっとこういう恩恵を受けてきたんだろうなぁ、なんて思ったりしたわけですが。

一方で、たとえ財政を拡張したとしても、いくら予算をつけても消化されていないとか、土木工事に金を注ぎ込もうとしてももう職人が軒並み引退していて、技術も承継されてないんだとか、そういうトホホなネタをよく聞きます。
それら含めて失われた数十年だったのでしょうし、もはや手遅れなのだ、と言う悲観的な意見も含め、現実には単にばらまけば良い的な話もできないのでしょう。
無論、だからこそ財政支出拡大よりは減税で、という主張には同意です。
コロナショックと言いつつ、昨年も税収が過去最高額とかいう報道を見ると、何か違うな、とは感じるわけです。

それから金融政策については、黒田バズーカこと異次元緩和について肯定的な立場での解説があります。
実は量的緩和というのも自分は理解が出来ていません。
日銀当座預金が積み上がることで民間貸出が増える、というのが曖昧というか直接は繋がらないような感じがあるんですよね。
マイナス金利が導入されたときは、銀行も「金利で持っていかれるくらいなら民間に貸し出すか」という論理にはなるんだろう、というくらいまでは理解できたのですが、そもそも別にアメリカはマイナス金利じゃないし、という。

どうも勉強不足で、それ以上のところが未だにわからない。
本書もマイナス金利については解説はありません。

それから、日本は黒田バズーカ以前にも金融緩和を行なっていたが小粒だったから効果がなかった、という解説ですが、これも黒田日銀が「異次元」であったからそれ以前の緩和政策が小粒に見えた、ということもあるのでしょうし、額面どおり受け取るわけにもいかないかな、と。
当時としてはどうだったか、というのは別に議論がなされる話なのでしょうね。

とはいえ、インフレが怖いからと、デフレを脱却しきる前に緩和を止める、ということを繰り返したことで、デフレスパイラルに陥った、というのは同意できます。
アメリカの場合でも、明らかに昨年(2021年)の緩和は余計で、それが今年の高インフレにつながっているという指摘がよくされます。
それでもデフレよりはインフレのほうがマシ、という判断はあったのでしょう。
インフレは引き締めれば良いだけですがデフレはハマると抜けられないことは、日本がお手本として示してくれていますよ、と。
実際、インフレはもうピークアウトしてそうですしね。
その引き換えとしての強い引き締め、それゆえのリセッション入り、ということですが、昨日のイエレン、一昨日のパウエルの表情とか見ていると、数四半期リセッションになるくらいで済むならデフレスパイラルに陥るよりは良いでしょ、というコンセンサスが彼の国にはありそうに見えます。

であるなら、ここ日本でも、ここで緩和を打ち切ってはいけないのでしょうね。
そんなことをすれば即座にデフレに戻るであろうことは理解できました。
円安?
為替は金利差をベースに進むとすれば、来年の利下げを折り込みつつある現状で、これから先一層の円安が進むとも思えないですが果たしてどうでしょう。

いずれにせよ、まだまだ自分には学び直しが必要だということを思い知らされた一冊。

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