金川顕教『科学的に正しい読書術』読了。
副題は「世界の研究事例×100冊のベストセラー」というもの。
ですが、実際に巻末に載っている参考文献は107冊ながら、著者が同じものが複数あったり、海外のものは見たところ翻訳本で4冊だったり。
洋書はありません。
それにご自分の著書もリストにありますね…。
これは「世界の」「100冊の」というコピーが先に来たパターンですかね。
まあ、だからダメとか無意味だとかいうつもりはまったくありません。
巷にある読書法の良いところをピックアップしたということでしょう。
そのため、少し矛盾する内容が混在していたりします。
本は好きなだけ書き込んだりページの角を折ったりしましょう、という主張の後に、読み終えた本はどんどん売っています、という主張が出てきたり。
いや、著者としては矛盾ではないのかもしれませんね。
自分は、売却するならきれいな状態で売ったほうが良いような…、なんてことを考えてしまうのですが。
貧乏性というのもありますが、汚い字で自分の思考の断片が載った本を売却する気にはなれないのですね。
そのあたりは世代の差かもしれません。
また、速読をあまり勧めていないのも最近のトレンドでしょうか。
いくら速読で本を速く読めても内容を理解できていなければ仕方ないのは当然ですからね。
読書が読書で完結している時代には、読んだ本を理解できているか否かというのは、さほど問題にならなかったのでしょう。
ところがその内容が、情報発信のためのネタだったりコミュニケーションの端緒に使われるようになると、速読で読み飛ばした程度では役に立たず、読書術にもある程度内容理解が求められるようになったのかな、と。
当たり前といえば当たり前なのですが。
昨今の読書術は、そういったSNS時代ならではの「読んでもアウトプットできなければ意味がない」という主張をベースにそこからまた更に一歩進み、「アウトプットするのに必要なところだけ読めれば良い」という感じに変わってきているような気がします。
本書でも、「予測して読む」とか「要約して読む」とかいった技術論が載っています。
最近のビジネス書では、そういったトレンドを踏まえてか著者の側も読者のニーズを予め想定した上で、こういう人は第2章から、とか、○○について十分な知識をお持ちの読者は第3章は飛ばして良い、みたいなことを前書きに書いていたりします。
なので、そういう事前情報にも気を配りながら有意義に読書を進めなさい、ということも本書には書かれています。
Webに転がっている文章に関しては、今やChatGPTに投げてしまえば要約までこなしてくれます。
今はお仕着せの仕様で要約されるだけですが、その要約が自分にとって十分なものなのか、過不足ないものなのか、というあたりも今後は各人の履歴などを踏まえたものになっていくのでしょう。
紙の本だとそういうことは出来ないので、いわゆるビジネス書的な情報収集のための読書に相当する書籍は電子書籍、LLMに吸わせやすいフォーマットでの提供が普通になってくるのかもしれませんね。
まあ、ビジネス書の場合、著者の宣伝のために出版している意味合いの方が強いものもあるので、紙の本がまったくなくなることはないのでしょうけれども。
それでも、コンサルまで入っての出版でアマゾンキャンペーンのお願いとかされると白けますよね。
名刺を交換した程度の付き合いの人から、出版したのでよろしくお願いします的なDMが届いたりすると、「あー、これもコンサルの指導なのね。」以上の感覚は起きなかったり。
話がズレました。
科学的に正しい読書術の話でした。
総じてビジネス書を通したノウハウの吸収とそのアウトプットを前提とした読書についての技術の本です。
文学作品を味わって読むとかそういう読書とは違います。
時代が進めば、紙で読まれることを前提とした「本」、それを読むという「読書」というのはまた少し違った意味合いが出てくるのかな、と。