Amazonプライム・ビデオで『そして父になる』視聴。
福山が若い。
いや、若いというのは言いすぎですが、まだ老いを感じていない、自分の優秀さを信じて突き進んでいる感じが良い。
そしてその優秀さを自分の子どもも受け継いでいるに違いないと信じたがっている序盤がまた良い。
そして取り違えが発覚して不意に「そういうことか。」と言葉を吐き出してしまうところがまた良い。
そうなんです。
仕事で完璧な自分が続いていると、自分は生まれたときから完全無欠でここまで来たのだと錯覚してしまうんですよね。
そして、そうではない我が子を見て、これは本当のオレの子か、と。
まあ、どうあっても紛れもない我が子なんですけど。
で、本作ではそんな疑問を持っていたところに、取り違えられた子だから自分の遺伝子は入っていないということを知らされるわけですね。
そして、ある意味納得してしまう、と。
これ、取り違えなど無く、慶多が実の子だったとしたら、果たして彼は息子を愛せただろうか、と考えるとなかなかに深いです。
「父」になれただろうか、と。
序盤の福山は、実際のところ家庭・育児については何のアイデアもない男として描かれています。
上司である國村隼さんから、「両方引き取るという選択肢もあるぞ」と提案され、それを自分の意見にしてしまうところも、実父の夏八木勲さんから、「実の息子はどんどん自分に似てくるのだから早く交換したほうが良い」と提案され、それを受け入れてしまうところも、自分の中に深く考えたゆえの何かがまるで無いからでしょう。
相手家族に対して「二人とも引き取りたい」と申し出た際に、リリーさんに言われた
「負けたことないやつってのは、ほんとに人の気持ち、わかんないんだな。」
という言葉にも、どこか腑に落ちていない表情なのがそれを物語ります。
でも途中から、完璧ではなかった自分を思い出して、記憶の中の「息子」と向き合うようになっていく様の描かれ方がすばらしいですね。
自分もピアノのレッスンは途中で投げ出したんだったな、とか、自分も継母を受け入れられずに家出したんだったな、とか。
「ミッションなんか終わりだ。」として「息子」と抱き合ってからのエンディングでは、その後、この二家族がどうなっていくのか、ということは示されません。
しかし、「そして父になる」とは、彼にとって完璧でない自分と向き合うことと同義だったとすれば、その部分はそれまでに十分描かれているのかもしれません。
大筋とは別に興味深かったのは、2013年の映画ですが、まだスマホがない時代という設定なこと。
「今から帰る」とかそういう細かい連絡すらも電話になるのは、少し懐かしい感じがありますね。
今であれば、その程度のことはSNS上のメッセンジャーサービスでのやりとりが主でしょうから。
あと、違和感があったのは、40歳前後の日系ディベロッパー勤めの、共働きでもないサラリーマンが、タワマンに住んでレクサスに乗っているという点で、そんな収入は無いと思うけどなー、と。
金融じゃないんだから。
まあ、そのあたりは群馬の地場の電器屋さんを営むリリー・フランキーとの対比を描きたいがゆえの過剰な演出でしょうから、野暮なことは言いません。
でも、10年前だとマンション価格もそんなに上がってなかったし、住宅ローン金利はすでに地を這うレベルだったので、エイヤーと飛び込んでマンションを買うというのはありだったのかな?
でもそうしたらレクサスもローン?
小学校受験もさせたら、結構家計は大変なことになってそうで・・・。
親も太いわけではなさそうだし。
あと研究所に異動になった後、タワマンは貸しに出したのか、売却したのか、そのまましばらく放置だったのか・・・。
まあ、そのあたりは映画なので詮索しないことにしましょう。
コメント
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