Amazonプライム・ビデオで映画『レイディオ』視聴。
おそらくは中央大学の映画系サークルの面々で作り上げたと思われる作品。
出来栄えを見るに、今やプロとアマチュアの境界は、技術的にはほとんどないのだな、と感じます。
もちろん、自分がそういう作品を好んで見ているからというのもありますが。
おおよそのストーリーとそのオチは、しばらく見ているうちにわかってしまいますが、どう描いていくのかという興味に加えて、今どきの普通の大学生の日常を垣間見られるのが良いですね。
初めに、主人公の彼がどんな大学生なのかを描写するのに、ゼミでの自己紹介である程度済ませてしまうのは、正直うまいな、と感じました。
ナレーションや独白に頼ることなく、「サークルには特に所属していない、ラジオを聞くのが趣味の経済学専攻の学生」というところまではそれでわかるので。
そこからほどなくして、公務員試験の勉強をしていること、女の子には奥手だということ、基本的には大学とアパートとの往復であるあたりで、どういう人間なのか観客も理解できる仕掛けになっています。
ま、要するに陰キャなんですけどね。
映画『ヴァニタス』に出てきた登場人物たちにも近そうですが、これが最近の大学生の典型なのでしょうか。
それともあの作品もそうでしたが、映画サークルに集う学生が描く学生像だからこうなのでしょうか。
でも、昔に比べ、学生は総じて真面目で、授業にも出るしゼミの課題もこなす。
そして、3年の終わりになれば、特に疑問を抱くこともなく就職活動を始める。
ましてや第一志望が公務員とか。
それを面白みがないとか小粒だとか言うのは簡単です。
間違っても自分探しとかなんとか言って留年するなんていう話にならないのは、資金的にそういう余裕がないというのも大きいのでしょうね。
そもそもサークルに入っていないという理由の一つには、資金的な面もありそうで、総じて今の学生たちの生活に、余裕がなくなっている感が伺えます。
まあ、もしかしたらそれは学生にとどまらないのかもしれません。
いや、この2作だけで判断してしまうのも危険か。
筆者がそういう印象を持った、くらいのことにしておきます。
そんななか、主人公の趣味はラジオを聞くこと。
まずもってお金がかかりません。
昔ならハガキ職人だって少なくともハガキ代はかかりましたが、今やメールで送るだけなので、そのコストすらかかりません。
本作では、主人公が高校生時代からメールを送っている先である、架空のお笑いコンビの二人によるラジオ番組がもう一つの舞台なのですが、欲を言うと、この番組があまり面白くない…。
無理して芸人の番組という設定にしなくても良かったんじゃないか、とは思いました。
普通に音楽の合間に何気ないトークを挟む番組としても、ストーリーは成立しましたよね。
主人公とヒロインが同じ番組のリスナーで、最後に互いがそれに気づき、別れもその番組に託す、というのがこの舞台の機能なので、別にお笑い芸人である必要はなかったのかな、と。
まあ、でも作品への不満はそれくらいです。
ヒロインは、多分白血病なのですね。
時が経つに連れ、帽子をかぶらせたり、時間の感覚が無くなったりといった、ちょっとした演出で、病の進行を描いています。
そのあたりもうまいです。
学生の作品ということで、なんとなく上から目線で語ってしまっていますが、自分が学生時代にこういう技術環境があっても、まあ、こんな作品作れなかったと思うので普通に尊敬です。