牧野知弘『マイホーム価値革命』

牧野知弘『マイホーム価値革命』 評論

牧野知弘マイホーム価値革命』読了。

副題が「2022年、「不動産」の常識が変わる」とあるので、てっきり今年出版された本と思い込み手に取ってしまいました。
実は2017年の本でした。
その時点での2022年の未来とは、東京五輪後であり、生産緑地問題であり、人口減であり、とにかくマイホーム神話は捨てましょう、という視座です。
具体的な年を書名に挙げてはいるものの、5年後を予想してみる、という以上のものではなかったのかもしれません。
2022年という年へのこだわりを、強いて言うなら生産緑地問題に絡んでの供給増ですが、ただこれも当時も騒いでいるのは極一部でしたし、今もそれがメインで何かが語られているという感じもありません。
枝葉でしたね。

現状からの後出しで振り返ると、もちろんコロナは予想していないし、コロナバブルでお金じゃぶじゃぶも予想していません。
五輪が一年後ずれしたのも想定外なら、その五輪が終わってもまだマンション価格が高騰を続けているのも想定外。
でも、それはそれ。
着目すべきは、当時得られる限りの資料でどんな未来を見ていたか、ですね。
その点では、人口減少については今更強調するべきことでもありませんが、相続税対策の1Kアパートが増え続けていること、それによって都心での空室率が上昇していることをデータとして示しています。
この事象は、ようやく最近になって、コロナでリモートワークが増えたから都市圏の1Kの空室率があがった、という形で説明されています。
ですが、当時のデータで、すでに現象としては発生していたことが伺えます。
コロナによって、このトレンドが可視化・意識されるのが早くなった、というだけなのかもしれません。

また、賃貸物件の供給は1K中心である一方、団塊ジュニア世代が家庭を持つようになり、都心の分譲マンションの需要が増えたことが挙げられています。
湾岸部のタワマンについては、円高による産業空洞化、工場跡地へのマンション建設による供給増についても触れられています。
ファミリータイプの賃貸物件が少ないので購入に向かわざるをえない、というのは実感としてもわかります。
共働きだから都心回帰、というのもわかります。
親世代の郊外戸建てが「負動産」として見向きもされない、というのもある程度理解できます。

でも、本書で紹介される、著者の不動産コンサルでの事例を読むと、著者の警戒的な姿勢とともに生々しさを感じてしまいますね。
なかでも9800万の都心のタワマンを共働きの夫婦が買った事例は身につまされます。
1億近い買い物も、マンションポエムにうっとりしながら、こうやって高揚感の中で流されるように意思決定されるものなのだな、と。
なお、冷静なツッコミとともにマンションポエムもいくらか紹介されていて、これもまた面白いです。

例えば我々の親世代なら、流されるように都市近郊の4000万くらいのマンションなり戸建てなりを買ったのでしょう。
夫は1,2時間かけて通勤、妻は専業主婦という生活スタイルが前提で。

それが、我々の世代になると、夫婦共働きだからというので都心に住むことを選択する代わりに、住むマンションの値段は倍。
家計のあり方として、これはあるべき形なのか、という気になったりしますよね。
親世代と比べて、世帯収入は倍だけど住宅コストも倍
いや、人によっては世帯収入は1.5倍くらいだけど住宅コストは倍以上、ということもあるかもしれません。
もちろん当時とは金利が比較にならないくらい低いので、収支は単純には決まりませんが。

あと、親世代の事例のなかで、周りと同じような消費行動をとっても、バブル前に買った人とバブル後に買った人で結果が大きく違うことの説明があります。

会社勤めをしていたころ、とある上司と折り合いの悪かった先輩が、あるとき「あいつはオレが都内にマンションを買ったのが気に入らないんだと思う。」とこぼしていました。
その場では大笑いしましたが、案外そんなものかもしれないな、と思ったのを記憶しています。(その上司は千葉の戸建て)
単純に、子どもの大きくなるタイミングの相場環境次第で、買える立地・物件に差が出ただけなのですが、ディベロッパーの広告に流されるままに消費した結果、世代によってそんな差が出てしまったのでした。
ただ、この10年でいうと、どのタイミングで買った人も、含み益でハッピーなんですけどね。

2022年の今年、不動産について「常識が変わ」ったのかどうかまではわかりませんが、住宅に関しては、周りに流されるだけでなく、少し考えてから判断をしてみたらどうですか、というのが著者の言いたいことです。
著者は、賃借人付きのファミリーマンションを買うのを勧めたり、完全に生活が分離している二世帯住宅を買って、片方を貸しに出す、というのを勧めていたりします。
同じ投資をするなら、需給が崩れる1Kじゃなくて、ファミリー向けを狙え、ということですね。
ここまでマンション価格があがると、そもそもどうやっても買えない層は増えるでしょうから、これはありですよね。

なんだよ。結局スター・マイカ賃貸併用住宅のススメかよ、とか言わないでください。
議論は結論に到るまでの過程が大事なのです。
投資判断のヒントももらえる一冊。

牧野知弘本

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