中川祐治『底地・借地で困ったときに最初に読む本』読了。
Kindleunlimitedで入手しました。
底借専門の不動産業者さんの営業本ですね。
ニーズは確実にあるわけですが、ニッチな分野というか、あまりやりたがる人がいないですよね。
基本的に不動産屋というのは、楽して儲けたい人の集まりですから、なかなかそこまで出来る人はいないのでしょう。
底地となると地主さんとの付き合いになるわけで、彼らの理不尽な要求にも、日々応えていかないわけで。
ツイッターでは、よく地主さんにこんなひどいことされた、みたいな暴露話を見かけますが、ああやって開陳でもしない限りは、とてもメンタルが保たない、ということはあるんだろうな、と思って眺めています。
実を言うと、そういう話も期待していたわけですが、そういう意味では期待はずれ。
考えてみれば、本書は「底地・借地のご相談ごと承ります」の営業本なわけで、そんな面白おかしい地主話が載っているわけはないのでした・・・。
でも、そうはいっても、それとなく漏れてきてしまう地主さんの生態とか甘さとか、そういうのを読む面白さはあります。
性格悪いですかね・・・。
とはいえ基本的な事項はある程度網羅しているので、辞書的に使えます。
わかりやすい反面、解説が簡単すぎる、というのはあるかもしれませんが、「それ以上の詳しいことを聞きたかったら、お問い合わせください」ということなのでしょう。
地主さんが困りごとを抱えて、解決の糸口にと本屋に行っても、弁護士さんとか税理士さんの書いた本しか並んでいないでしょうから、そういう意味では意味のある本と思います。
本書でもやはり驚くのは地代の水準で、固都税の3~5倍が基準、とあって、本当にそんな額でやっていけるのか、と思います。
これは旧法の場合とのことですが、地主さんの底地は今だって大抵は旧法でしょうからね。
土地を持っているという満足感とか優越感とかはあるのかもしれませんが、地主というのも大変だなぁと思います。
それに普通の収益物件と違い、減価償却もないわけですからね。
借地の貸し出しを事業とするのに経費なんてたかがしれているだろうし、ほぼダイレクトに税金はかかってくるわけで。
そう考えると、どうにも、バランスが崩れているような気がしますね。
少なくともそのままでは事業としては成立し無さそうです。
何らの策も講じない地主というものが、いずれは解体されるように合法的に環境が整備されているかのような感があります。
チャイナのようにお上が開発を決めたら、問答無用で立ち退かないといけない、というやり方もどうかと思いますが、所有権を地主からダイレクトに奪うことはしないまでも、徐々に手放さざるを得ない状況に追い込む、法や慣習のあわせ技というのは、なんとも言えない味わい深さがありますね。
少し話は変わりますが、中国共産党は日本の自民党による支配を徹底的に研究している、と聞いたことを思い出します。
形式的にも一党独裁で普通選挙も存在しない国と、選挙もあり民意による選別も行われた上での55年体制の国と。
西欧先進国から、常に民主主義国家ではない、と断じられる国からしたら、真似したいと思うのは当然です。
でも、こういうシステムの断片を見せられると、それこそ一朝一夕には出来上がらないのだろうな、と。
チャイナも目指す方向はそこなのでしょうけれども。
少し話がズレました。
大きくなりすぎました。
日本の底地・借地の話でした。
我々投資家の側からすると、相場のピークになると「借地でアパートを建てる!」みたいな話が出てくるな、という印象があります。
自分も昔、そういうセミナーに参加したことがあります。
2006年とか2007年とか、それくらいだったような。
えぇ。ピークですね・・・。
購入した借地にアパートを何棟も建てたという方がセミナー講師でしたが、特にノウハウめいたものがあるわけでも無かったように記憶しています。
浜銀のとある支店長さんが、比較的借地でも評価してくれた、というのが勝因だったような。
横浜・川崎のエリアで、所有権なら7~8%くらいのところを借地権なら10%くらいで計算できるからお得、みたいな、今振り返れば、だったらそのまま所有権で買っとけよ、というツッコミがありそうな時代のお話。
いずれにせよ、本書はそういう本ではありません。
投資家目線ゼロです。
でも、1時間くらいで読めるので軽い読書にどうぞ。