藤沢数希『損する結婚 儲かる離婚』

藤沢数希『損する結婚 儲かる離婚』 評論

藤沢数希損する結婚 儲かる離婚』読了。

離婚裁判についての解説本ということで、別に取り立てて今必要な知識では無いのですが…。
今週の「全宅ツイ不動産チンパンジー情報」でも話題になっていたので少し体系立てて知っておこうかと手に取った次第。

著者御本人の実体験の話は出てこないのですが、弁護士でもないのにここまで書けるのは、まあ、当事者だったことがあるのでしょうね。

慰謝料とか養育費とか、週刊誌や2ちゃんねるの世界でしか聞かない単語です。
よく分からなかったのですが、日本で離婚で揉める場合にもっとも重要なファクターは婚姻費用だということが本書でよくわかりました。

2ちゃんとかで「汚嫁の不倫相手から慰謝料○百万取ったった!」みたいなのをよく見ます。
あれは所得水準が低いからその程度の額なのだと思いこんでいたのですが、どうやら実態は違ったようです。
相手がどんなセレブでも、浮気されて傷ついた、みたいなところからの慰謝料はその程度しか取れないのですね。

それに比べて、結婚生活が壊れてから離婚が成立するまでの婚姻費用の計算式の酷いこと。
日本においては、収入の多い異性を相手に一度でも籍を入れてしまえば即勝ち組だというのがよくわかります。
こんな制度になっているなんて知らずに入籍してましたよ…。
でも、それを知っていたら怖くてよほどのことがない限り結婚なんてしていなかったことでしょう。
まあ、お互い20代で、もうすぐ30の大台に乗るというのを意識しての結婚なんてそんなものかもしれませんが。
もう少し年齢が上がってきて、結婚についてのロマンや幻想などもすっかり消え、打算と妥協が見え始めてからのそれだと変わってくるのでしょう。
本書でも類似の例がありましたが、ツイッターでこんな書き込みを見ました。

まあ、ここまで言えるほど冷静だから上場まで漕ぎ着けられるのかもしれません…。

本書の全体の構成は、前半に離婚裁判の現場で使われる理論・計算式の説明、中盤にケーススタディ、その後倫理的にはどうかと思われるものも含むハウツーを経て、最後は現状の法制度の限界とそれを踏まえての少子化を食い止める方策の提言などとなっています。

とはいえ、一部の富豪による一夫多妻制、あるいは妾さんに子どもを産んでもらう、というのが現実的とも思えないのですよね。
相続のことを考えると、子供の数が増えれば増えるほど次の代で資産は散逸するわけです。
どんな富豪でも10人子どもを作れば、論理的には次世代の面々が一人頭で受け取る遺産はそれぞれその十分の一です。
遺言で制限してもよほどのことがない限り遺留分は皆持っていますし限界はあります。
出産時に遺産分割について何らかの契約を結んだとしても、遺留分までは削れなさそうです。
それを意識せずに次から次へと子どもを作ろうという気にはなかなかなれません。
著者は養育費のことのみを考えて、子ども一人で合計でも1~2億しかかからないのだから良し、みたいなことを言うのですが、相続のことまで考えるとそういう結論にはなりません。

今さら長子相続制の時代に戻すことは出来ません。
出来の良い誰かにすべて継がせたい、みたいな希望も叶いません。
遺言があったとしたって、きょうだい皆平等の原則から外れた被相続人の意向なんて無視されますからね。
本人が死んでしまったら誰も気にしません。

著者は個人の人生を考えているので気にならないのかもしれませんが、不動産を触る人間からすると、どうやって自分の資産を次世代に渡すか、というのは一大テーマです。
育て方を一つ間違えればあっけなく没落するという様は周りでもそれなりに見ますし、とってもセンシティブ。

まあ、兄弟たった二人でも揉める西武堤王国みたいなこともあるので、継承というのは難しいものではあります。

いずれにせよそういった方面への思索が向かないのは、著者の結婚歴は存じ上げませんが、お子さんはいらっしゃらないのかな、という気はします。
子どもがいてもホリエモンみたいにまったくそういった意識の欠片も感じさせない人もいますけれども…。

それにしても、本書でもちょいちょい嘘っぽい経歴が入ってくるのが気になります。
方々でご自身が書いていた経歴とも合わせ総合すると、ファンドマネージャーだったことがあり、プロップトレーダーだったことがあり、投資銀行業務をしていたことがあり、様々な金融商品を開発していたことがあり、ということになります。
いや、そんな人っていますかね…。
それから、冒頭の事例に登場する日本人のホステス妻を持つ中国人青年。
とある外資系金融機関のトレーディング・チームで同僚だったという触れ込みなのですが、本土の大学を出て日本で就職して、のパターンだと金融でもIT部門かバックオフィスが多い印象。
まあ、皆無とは言いませんが。

そういったフェイク気味な語りを除けば、全日本人が結婚前に知っておくべき知識の詰まった一冊。

損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書) [ 藤沢 数希 ]


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