成毛眞『39歳からのシン教養』読了。
成毛さんの本なので、相変わらず上から目線です。
もう上がりのポジションにいる人が若い人に向かって言いたい放題を書き連ねる、というスタイルは令和の御世に至っても変わらず。
昔読んだ成毛本では、セールで服を買っても数万円しか安くならないのだからセールになるまで待つなんてナンセンス、という主張があって、さすがにその主張は若い人にはウケないのでは、と思ったものでした。
今の若い人の可処分所得はその当時よりさらに下がっているので、もうそういう主張が原稿に出てきたら、編集の段階で削除されていそうです。
本書でも、知識をアップデートしないといけないよ、ということを繰り返し述べていますが、知識も価値観もアップデートされていないのは成毛さんかもしれない説。あると思います。
いや、アップデート云々ではなく、彼からしたら下民のことは相手にしていないのだ、というところでしょうけれども。
本書でも、偏差値58以上、国民の上位2割に向けた内容という触れ込みで、清々しいほどの選民意識。
本書のタイトルを分解すると、対象が「39歳から」上で、扱うテーマは教養ではなく「シン教養」。
教養ブームにノリたい編集者さんが、成毛さんのところに企画書を持っていって、こんな内容でお願いします、的な話をして、成毛さんが、いやこういう内容なら書いてやってもいいぞ、みたいなやり取りを経て出来上がった本なのだろうな、という感じです。
このタイトルの元になっている主張をまとめると以下の通り。
30代にもなって「教養」を求め始めるのは遅すぎる。
体系的に何かを学ぶのは諦めろ。
Wikipediaを活用して知識を掘り下げろ。
そうして得られた知識が「シン教養」というものなのでしょう。
気になるテーマがあったらWikipediaを開き、そこからわからないワードなどもタブブラウザで横に展開していき、それらを読み込んでいくことを勧めています。
10年ほど前に比べると、Wikipediaの信用性もだいぶ上がったし、最先端の知識は書物では得られないのだから、これが一番効率的なのだ、という主張です。
「世界一効率的な「教養の身につけ方」」という触れ込みですが、まあ、教養というのはそういうものではないのでは、というツッコミはあるでしょう。
なので「シン教養」としていて、日々の業務に追われる30代ミドルはこれくらいで十分としておけ、という。
本書の後半は、この技法を使って成毛さんが最近蓄えた知識のご開陳。
統計学・生命科学・地政学・数学、と脈絡なく続きます。
歴史関連の知識の箇所で、Wikiでは中国の立場からこんな説明がされている、みたいなことをサラッと書いています。
今や、SNSでの大量工作アカウントに留まらず、Wikipediaでも中共によるプロパガンダ活動は展開されていて、というかそちらのほうが歴は長く、歴史戦の現場がそこにあるのだ、という視点は抜け落ちているんだろうな、という気がします。
ところで本書の内容は、2015年の著書『教養は「事典」で磨け ネットではできない「知の技法」』と相反する気がするのですがそれは…。