万城目学『鹿男あをによし』読了。
『鴨川ホルモー』がデビュー作で本作が二作目なのですね。
前作は京都の街の描写が多く、こういうのは映画にしたら街の良いPRになるよなぁ、なんて思っていたら、その通りになりました。
程よくストーリーが整理されていて、ブレイク前の濱田岳くんがいい味を出していた作品でしたよね。
過剰に街の中を動き回ることで観光名所を詰め込んだりなんかして、あからさまなところはありましたが…。
四条烏丸の交差点で四大学の代表が顔合わせをするシーンはどう処理するのかな、と思っていたら特撮とかでは無さそうで、普通に夜にあの交差点で撮ったっぽい映像でした。
深夜に少し周囲の交通を止め、かなりのエキストラも配置した上で撮影したのでしょうか。
どういう許可を取ればできるのかは知りませんが。
それはそれとして、著者としてもメディアミックス的にはこの路線が良い、と思ったのかどうかはわかりませんが、本作は奈良が舞台です。
本作はその後映画ではなくドラマになりましたが。
実は奈良には修学旅行以来行ったことはないのですが(通過はすることはある)、もちろん本書を読み終えて、また行ってみたいと思いました。
その際には安倍さんが襲撃された場所にも立ち寄りたいですね…。
でも、『プリンセス トヨトミ』や『偉大なる、しゅららぼん』では、特に大阪や琵琶湖の「聖地巡礼」をしたいという気分にはなりませんでした。
この差は一体何なんでしょうね。
あるいは本作以降、著者の力量が上がってきたので、特に場所へ寄りかかることなく筆を進められるようになったということなのかもしれません。
まあ、『ヒトコブラクダ層ぜっと(戦争)』なんてイラクですからね。
まったく行きたくなりませんでした…。
本作は山場となる学校対抗の剣道の試合でヒロインが優勝した時点でもまだページにかなり残りがあり、そこからもう一捻り入っていました。
そして、そこで序盤の伏線をすべて回収する展開。
二作目にしてもう話の進め方が上手いんですよねー。
序盤の一見普通な日常から、古都ならではの風習などをベースにした異世界に引きずり込んでくるあたりは「鴨川ホルモー」に通ずる万城目節なのですが、そこから更に進化していたわけです。
それに自分も子どもの頃に剣道を習っていましたが、そんな人間が読んでも臨場感のあふれる対戦シーンの描写でした。
小学生だったので「突き」はありませんでしたけれども。
奈良好きな人にもそうでない人にもオススメの一冊。