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新庄耕『夏が破れる』読了。
新庄耕さんの本を読んだのは三冊目。
『狭小邸宅』『地面師たち』に引き続きです。
『小説すばる』では「地面師たちⅡ」の連載も始まり、そちらもチェックはしておりますが、あちらはまだまだどう進むかわかりませんね。
やはりハリソン山中で続編を書いてくれました、と嬉しい限りですが。
シンガポールのIR取材が楽しそうです。
今回は、不動産業界とはまったく関係ないお話です。
というか、自分がこれまで読んだのが新庄さんの小説のうち不動産に関わるものだけ、というだけで、いろいろなテーマでの作品があるのですね。
もともとリクルート勤めだったそうですし。
あとがきには、
「当初の構想では、清涼飲料水のコマーシャルフィルムのような青春群像劇を描く予定だった。」
とあって、読後にそれを読んだものだから、「どこがやねん!」とツッコみたくなりました。
ホラーは書きやすい、読ませやすい、という話は聞いたことがありますが、ここまでしなくても、と。
冒頭、大人になった主人公のタイでの描写があって、そこから中学生時代の自分の回想という形で本編が始まります。
最後はここに戻るのかな、と思ったのですが、中学生のままで終わりました。
なので、作品の中で冒頭だけ浮いた形になるのですが、これは、タイへの取材旅行を経費計上するため、その成果を作品に落とし込んだ形にした対税務署的な細工です、と思えば納得はいきます。
「地面師Ⅱ」もシンガポールから始まったし、東南アジアがお好きなのかもしれませんね。
途中、15歳の主人公が通う中学校の担任が50代女性というくだりが、少し違和感がありましたが、まあ、それは物語の大勢には影響しないごく一部。
今の公立学校の教師には、団塊の世代がごっそり抜けた後、20代、場合によっては途中採用の30代というのが多く、ちょうど50代くらいで、しかも管理職ではなく普通に担任を受け持つような教師は、今は少ないんじゃないかな、という感じがした、という程度です。
ホワイトカラーの夫婦共働きの家庭の一人っ子という設定なら、わざわざ公立中に通っていなくても、とも思いましたが、私立だと本筋じゃない序盤でもっとややこしいことになっていたかもしれませんからね。
これはこれでありなのでしょう。
自分は沖縄には行ったことがないので、島の描写が適切なのかどうかはわかりませんが、離島ならではの圧迫感というか逃れられなさが、怖さを演出しています。
なぜ警察もあてにならないのか、それからそもそもなぜ自分の親がそんな施設に子どもを預けることにしたのか、という読んでいる途中で浮かんでくる疑問は、最後にそれとなく解消されます。
こういうところに著者のプロ味を感じます。
とにかく書き味が上手。
ホラーなのに惚れ惚れとしてしまいます。
扱っているのは小児性愛とかオカルトじみたものとか、気色悪いはずなのですが。
あと、オカルトチックな儀式とかの部分は解明・解説されることなく終わりますが、主人公目線のお話なので、要らないと言えば要らない。
ただ、こういうのは、なにか参考にしたものとかはあったのかな、と気になったりはしました。