映画『彼女がその名を知らない鳥たち』視聴。
主役の二人が蒼井優と阿部サダヲでないと成立し得ないと思わせるに十分な作品。
二人とも狂気の世界に入り込んだ人間を好演しています。
そんな二人が同棲しているのだから、狂気は掛け算になっていきます。
そういう狂気は、普通はDVなど二人の間で完結したり、子どもがいればその虐待とかに向かうのでしょうが、本作品は外に向かっています。
それは、幸か不幸か彼女が前の男を引きずっていたからですね。
二人で刺しあうのではなく刃はそちらに向かった、と。
その刃を向けられた当人の一人である竹野内豊ですが、一瞬中田英寿が出てきたかと思いました。
自分のことしか考えない中年を演じようとすると、どうしてもああいう風貌になってしまうのでしょうか。
序盤から話が進むに連れて、阿部サダヲがどんどん汚くなっていきます。
心も外見も。
どうしてこんな描き方をするのか、と思っていましたが、最後になって二人が出会った当初の回想した映像で、きれいな阿部サダヲが登場してからようやくわかりました。
この女と出会って、彼も壊れたのですね。
それを明示的に描いただけなのでした。
中盤の阿部サダヲの告白で、え?そんなオチ?でもまだ中盤だぞ、と思ったのですが、最後にもう一度捻ってきて、納得感がでました。
それにしてもメンヘラあるあるというか、ああいう女性は、自分に都合の悪い記憶というのは忘れがちですよね。
ここまで極端でないにせよ、どういう心理構造になっているのか、と思うこともしばしばです。
不倫相手役の松坂桃李も薄っぺらい男の演技が最高。
始まり方はデパートの営業員としてのコンプラ的には一発アウトでしょうけどね。
贈る時計も安物なら旅行先についての印象コメントも写真集の丸パクリ。
ここまで軽薄で良いのかというレベル。
でも、だからといって相手に刺されるのは割に合いません。
そういう意味では、不倫相手もきちんと選ばないと痛い目にあうのですね。
初めて会う男に涙を見せるような女はヤバいと最初から気づいておかないとなりません。
まあ、薄い男は、そういうことにすら考えが至らなかった、というお話。
ラストに関しては、私はメンヘラ女への彼なりの最大の復讐と理解しました。
何が「お前の子どもとして生まれかわる」ですか。
意識的であってもなくても、そんなの特級の呪いじゃないですか・・・。
dTV、U-NEXT、Huluでも観られます。