プライム・ビデオで映画『偽りのないhappy end』視聴。
意外と登場人物が多くて整理するのに大変でした。
妹が行方不明になった姉同士が出会い、ペアになってそれぞれの妹を探すのですが、その姉ペアの性格が動と静で対照的で、強いて言えばそこはわかりやすかったです。
姉二人は、必死になっていなくなった妹を探すくらいには妹思いだけれども、どちらも実は妹のことは何も知らなかったよね、という気づきがストーリーの軸になっています。
ただ、主人公の場合には、その遠因として自身が中学卒業後にすぐに滋賀の街を出て上京してきたから、ということになっているのですが、そこが少し現実味のない設定です。
中卒で出てきた割には、東京での職場はきれいめのホワイトカラーで、付き合っている彼氏も、おそらくは一流企業で働いているエリートサラリーマンっぽい描写。
住んでいる部屋も、別に三点ユニットの十数平米ワンルームだとか風呂なしトイレ共同のボロアパートだとかいうこともなく、妹が転がり込んできてもシーツで部屋を区切れる程にはスペースのある単身向けマンション。
もちろん、中学卒業後に上京した、というのは必ずしも中卒で働き出したということを意味するわけではないでしょう。
単身で都内の高校・大学に進み、就活レースにも勝利しホワイトな職場で働きだしただけなのかもしれません。
それでも、都内に住む親戚を頼ったとか、そういう描写もなくやや唐突。
まあ、そんな事を言うと80年代のトレンディドラマだって、上京してきた主人公がすぐに仲間とワイワイやれるくらいの港区のマンションに住んでいたわけで現実味がないのは同じでしょうか。
とはいえきらびやかな東京だけが切り取られている印象はあり、それゆえに冒頭で主人公は妹にあなたも東京に出てきなさいと諭すわけです。
「何もない滋賀」との対比をさせたいがためにこうなっているのでしょうけれども、まあ、ちょっとありえないかな、と。
単身上京組となると、『あのこは貴族』とか『ここは退屈迎えに来て』とか、そういうレベルの解像度は求めたいのです。
それに主人公からしたら何もなかったから捨てた過去・地元なのですが、どうしても琵琶湖の存在感が際立ってしまいます。
琵琶湖は、やはり何もなさを描くにはスケールが大きすぎるのですね。
主人公にとっては地元には何もなかったかのように描いていくのですが、湖畔にしても湖上にしても映像になったものを観ると、こちらからすると「琵琶湖があるやんけ。」な気分になるのです。
(そこに住んでいる人からすると「琵琶湖しかない!」みたいな自虐ネタになっているようですが…。)
その大きさからすると人間の抱えていそうな悩みなんてどうでも良くないですか?みたいな説得力を持ってしまって、そういう意味では地元が滋賀なのは失敗。
こういうのは、どこにでもありそうで無さそうな匿名性のある寂れつつある地方都市的なところを選ぶべきだったのでしょうね。
『ここは退屈迎えに来て』はどこかの地方都市、という設定だったと思います。
『あの子は貴族』は福井とかだったかな?
まあ、映画撮影に街が協力的になってくれればくれるほど、その都市を匿名で扱うのは難しい話ではあるのですが。
匿名的な街を描く撮影現場として選ばれても、協力する側には何のメリットもないですからね。
話としては最後に色々繋がり、悪人は居ないけれども死人は出る、というどう考えてもhappy endでは無さそうなエンディングですが、本作後、演者がことごとくブレイクしているので、そういう目線で見ると面白い作品。
公開は2021年ですが2020年の作品のようです。
話の中ではコロナ前。
松尾大輔監督という方ですが、園子温の下で長いこと助監督を努めていたことが本作の売りになっているほどには過去の作品という感じはあります。
ただ、主役の成海唯さんは、まだこのころは少し演技に硬さがあったような。
主役だからということもありますかね。
「突破ファイル」とか「大河ドラマ」での演技よりも、見ているこちらにも力が入ってしまう感じがありました。
逆に河合優実さんは高校生役の冒頭からいつもの感じです。
あの背中の曲がった感じも、若いのに影のある女のそれで、まあそれでだいぶ説明できてしまうところもありますが。
U-Next、Huluでも観られます。