橘玲『シンプルで合理的な人生設計』読了。
いつもながらの橘節ですが、いつもながらすぎて目新しさが無い、とも言えます。
至極当然のことが述べられているという印象を持ってしまうのは、自分が橘さんの思想に慣れ親しんでいる証左でもあるのですが。
以前の著『幸福の「資本」論』でのフレームワークである社会資本・人的資本・金融資本という3つの軸は本書でも健在です。
選択の数が少ないほど人生はゆたか。
そのためには金があれば良い。
金持ちになるには資産を増やせば良い。
資産の増え方は「収入ー支出+資産×運用利回り」に尽きる。
資産運用はグローバル株インデックス一択で良い。
収入は好きなことを長く続けるに限る。
本書の内容をまとめるとこんなところでしょうか。
主張自体はもうこの20年変わっていません。
ただ、それを説明するための事例が、著作を重ねる中で増えたり洗練されたりしてきているのですね。
で、著作で勧めている通りのことを橘さん自身が実践しているとすれば、時とともに海外証券口座での残高もこの四半世紀で増えているのであろうなぁ、と。
実は私は、橘さんが本名で講演しているInteractivebrokers口座の開け方のDVDも持っていたりします…。
購入したのは学生の頃だったと思います。
種銭が出来たらこれで口座を開くんだ、なんてことを考えていた記憶があります。
その頃は、自分も英語にアレルギーがあったし、世の中でもまだまだ海外株とか海外保険とかいうのは、さほどメジャーではありませんでしたね。
実際には自分は運用会社に勤めることとなり、しかも外国株を運用する部署になったので、サラリーマンである間は個人で口座を開設することはなく、実際にIBを使うことになったのはリタイアしてからで、無論そのころにはそんな解説DVDなどなくても自分で開設できるようになっていましたが。
それはともかく、自分などは、出張でなら海外は行くけど、別に自腹で飛行機に乗ってよその国に行ったり、ましてやよその国で暮らしたいなどという希望はまったくないタイプなので(結局、会社勤め時代に海外赴任の打診は三回断った)、橘さんの「旅とライター稼業と資産運用」みたいな生き方はそんなに憧れないのですが、見る人が見たら理想的な人生なのだろうな、と思います。
それでも我々は、そんな彼の人生も、前半ではかなり金銭的に苦労したのであろうことは、自伝的な書である『80’s』で知っているわけです。
逆に言うと、そんな前半があっても巻き返せるくらい、自分にマッチした仕事と時の力をかけることは有用なのだ、という。
でもそんな長期的な効果を見通して自分の行動を続けていくというのは意外と大変。
だけど、成功というのは短期的な最適化より長期的な最適化を図ることで生まれるのですよ、という彼自身の人生がサンプルとなった「シンプルで合理的な」結論です。
この本では、具体的にどういう手段で長期的な最適化を人生に組み込ませていくか、みたいなことは書いていません。
そういうもののために、仕組みとしてのGTDであったり、ツールとしてのTodoistであったりNotionであったりがあるのだな、と。
まあ、橘的に言うと、それができるかどうかも持って生まれた資質なのですよ、という」「言ってはいけない 残酷すぎる現実」なのでしょうけれども。