小田嶋隆『東京四次元紀行』読了。
小田嶋さんの最初で最後の小説。
最後の、というのは、つい先日亡くなってしまったからですが。
残念ですね。
そうそう、こういうのでいいんですよ、と微笑みながら、あっという間に読み終えてしまいました。
いろいろなところで書き散らしたものを纏めた短編集で、統一感はありません。
最初のうちは登場人物がつながっていて、なおかつ場所も特定の区に紐づいていたのですが、その縛りも途中でなくなり、いつの間にか自分自身の昔語りになったかと思えば、最後はタイムループモノに。
どういうわけか、早稲田と立教の登場する率が高いですが、小田嶋さん自身がどこかで見聞きした話を多少脚色したものが主でしょうから、必然と母校とその周辺の話が多くなったということでしょう。
小田嶋さんのことを知ったのは、もう10年以上も昔。
日経BPオンラインでの連載コラムです。
そのうちコラムだけでなく、岡康道さんを交えての雑談の書き起こしとか、楽しませていただきました。
アル中から帰ってきた男、というのが売りの一つだったでしょうか。
当時から、昭和っぽい破滅型芸人の鑑みたいな立ち位置でしたよね。
ところが、第二次安倍政権発足後、コラムもアベガー的なものが増えてきたこともあり、少し距離を取るようになりました。
また、著名人としては、初期からツイッターをやっていた1人だったでしょうが、水道橋博士などと同じく、歳を重ねるにつけキレの悪いギャグが目立つようになってもきて、フォローも外していました。
歳は取りたくないものだ、と思わせるに足る人の1人だったでしょうか。
内田樹さんなんかにも感じることですが。
そして、時は経ち、訃報を聞き、本作品に出会いました。
認知症患者でも昔の話は鮮明に覚えている、なんて話をよく聞きます。
病魔に侵されつつも、自身の昔話や知り合いから聞いた話などは、生き生きと筆に載せることは出来たのですね。
ご本人自身も、コラムニストはコラムに嘘は書けないが小説という体裁にすればフィクションでかまわないことに気づいた、みたいなことを書いていて、もっと早くにそれに気づけば良かったのではないかと思わざるを得ません。
最初で最後の作品であることが、つくづく残念です。