小和田哲男『教養としての「戦国時代」』

小和田哲男『教養としての「戦国時代」』 評論

小和田哲男教養としての「戦国時代」』読了。

小和田先生の戦国モノの新書本です。
面白そうなトピックごとに短めの解説が続きますが、こういう歴史好きのツボを心得たような進め方は、YouTubeチャンネルの趣向そのままというか、やはり小和田先生はひとり語りが良いですね。

NHKの「英雄たちの選択」などでも時折お見かけしますが、VTRでの出演ならまだ良いのですが、スタジオ出演のときなどは、例えば共演の奈良大学の千田先生の見立てなどをあからさまに馬鹿にしたような表情で見ているのをカメラに抜かれたりなんかして、対話というよりは一人で議論を組み立てて、御本人に語らせる感じのほうが安全なタイプの方だろうと思います。
というか、活字媒体というのはそもそもそういうものですが。

まあ、そんな勝手なことを言ってますが、すでに重鎮でいらっしゃると思うのに、80近くなってなおYouTubeを始めよう、という心意気のほうが凄いわけで、そういう積み上げがあって、こういう新書の企画もあるということでしょうかね。
一応月刊誌『歴史街道』での執筆記事が下敷きになっているそうですが、大幅に加筆修正とあるので、最近のYouTubeネタを書き物としてブラッシュアップしてまとめた感じでしょうか。

最新の研究成果を踏まえた解説で、これまでの定説で覚えていた知識を本書で塗り替えて教養を蓄えてほしい、というのが本書の狙いでしょうけれども、その最新の研究に基づく説というのが、「私の発表した論文か始まり」みたいなものもあって微笑ましいです。
これくらいのアピールはあっても良いですね。

ただ、「通説」はこうだったが今の説はこうだ、式の解説ですが、最近の大河を見ている人にとってはむしろ「通説」のほうが意外感のある説だったりすることも多々。
例えば今川義元の愚将説とかですが。
ただ、これも考えてみれば当然で、最近の戦国モノの大河のときには小和田先生が時代考証に入っていることがほとんどなので、先生の把握している最新の研究成果がシナリオに反映されないわけないですからね。

大河でこういう描き方をしているのは、歴史をガン無視しているわけではなく、むしろ最近のこういう研究成果を反映しているからなのだな、という見方を確認できるという意味で、オトクな一冊。

小和田哲男本

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