映画『Hysteric Betty』視聴。
30代独身女子の物語。
とはいえ東京で大学を出て総合職でキャリアを積んでいる、という系統でも、短大から一般職でなんとなく売れ残ってしまいました、という系統でもありません。
北関東の閉塞感ある田舎町で親と同居しながら仕事をし、たまに憂さ晴らしのように上京する、という系統です。
身につけているファッションから察するに、『CUTiE』とか読んでいるうちに、歳を重ねてしまったパターンでしょうか。
服飾の専門学校を出ているという設定なので、どっぷりとそっちにはまった口かも知れません。
『CUTiE』を購読していた当時の中高生のうち、掲載されているブランドの服を買える子はほとんどいなかった、という笑い話を聞いたことがあります。
あれこそは「地元ではちょっと浮いてしまうセンスある自分」みたいな中二病女子層を狙い撃ちにした雑誌。
電気グルーヴがよくバカにしていました。
「何が「デザイナーの卵です」だよ。オマエら一生孵化しねーから!」
と。
あの雑誌が無くなったからと言って、そういう子らがいなくなったわけではなく。
で、そういった子らの承認欲求は、地下アイドルのそれとも微妙に地続きなのではないか、という描かれ方が新鮮でした。
実は自分が知らないだけで、当然にそういうものなのかもしれないですが。
ただ、本作のストーリーの中では、主人公自身は、別に承認欲求をこじらせたわけでもなく、ただ自分を撮影してくれたカメラマンに愛されたかっただけ、というきれいな流れにはなっていました。
そこはきれいにまとめすぎな感も。
まあ、監督・脚本・主演が一人なので、文句はありませんが。
ところで、主人公が上京といっても徘徊するのは高円寺なのですね。
そして、そこで出会い交わるのは、地下アイドルだったりカメラマンだったりするわけですが、高円寺は地下アイドルの聖地なのでしょうか。
あまりその界隈は詳しくないのですが、ロック系のミュージシャンが中央線沿線に多く生息していたこともあってか、ライブハウスはまだ多く残っていそうです。
昔、成り上がりを夢見たロッカーたちの使用していた機材・設備は、今ではすっかり償却も済み、地下アイドルたちが承認欲求を満たすために有効活用されている、となると胸熱です。
そういえば、山口岩男が昔ラジオ番組で、高円寺の安い居酒屋で、売れる前の氷室京介をよく見た、なんて言ってましたっけ。
よくも悪くもDJブースが目立ってしまう「クラブ」的な空間では、アイドルステージは難しい、ということもあるでしょうか。
そういえば渋谷系アイドル、なんてのは聞いたことないですからね。
強いて言えば「うらりんギャル」くらい?
もう10年以上前になりますが、出来たばかりの渋谷のヤマダ電機の店頭で、ブレイク前のももクロのステージをたまたま見たことがありましたが、それでも店先の「特設」ステージでしたからね。
初めから秋元康が秋葉原に資本を投下して育てたAKBみたいなものを除けば、「地下」アイドルは既存の設備を利用するわけで、このあたりのインフラからの地下アイドルの語り口がどこかにあっても良さそうな。
吉見俊哉ゼミに所属しているドルオタとか、誰か書いてくれないですかね?