綿矢りさ『あのころなにしてた?』読了。
タイトルの印字で、ころなが色違いになっていて、コロナと読ませるしかけ。
内容は2020年1月5日から12月3日までの彼女の日記です。
「新潮」2020年6,8,9,10,11月号、2021年2月号に初出とあるので、日記を連載していたということですね。
もしかしたら、その連載の企画が立ち上がった当初は、著者も編集部ももう少し違った形のものを考えていたのかもしれませんが、期せずしてコロナ禍と向き合う作家の日常のルポになっております。
というか主婦目線の日常の細々としたことをつらつらと、というほうが通りは良いかもしれませんが。
それでも、谷崎潤一郎や太宰治が戦時中もあんな文章を書いたのはこういうことだったのか、と災厄を追体験する様とか、ちゃんと作家思考を開陳する箇所もあります。
冒頭の2020年1月は、まだまだコロナのことなど考えることもなく、家族でスキーに出ている様子の記述など。
勝手にふるえてろと突き放したり、背中を蹴りたがっていた少女も、今や人の親なのだな、なんて感慨を持ってしまいました。
実を言うと、最近の綿矢さんの作品はまったく読んでいないのですが、こういう姿を文章にして世に出しているということは、だいぶ作風も変わっているのでしょうか。
だって、川上未映子女史とかは、四歳の子の育児で苦闘する姿とか、絶対に筆に載せないような気がするじゃないですか。
いや、偏見かもしれませんが。
普通に都内で生活する主婦・母としての目線が作家ならではの表現とともに淡々と語られるのですが、アマゾンレビューでもあったように、たしかに毒はないので楽しくない、という人はいるだろうな、と思います。
自分は、ペッパーくんによるホークスの応援の整然としてなさが安心するとか、なんかアマビエが綺麗になっていってないか、とか、使い捨てマスクを何度も使うとけばついてくるとか、手に傷があると消毒液で悶絶するとか、そういう小ネタでクスッとしながら、一時間ほどで読み終えられましたので、不満はありません。
あと、最後に一言。
家中に付箋を置いておくと、本の重要箇所で読書が滞ることがないので良い、というのは100%同意なのですが、結構掃除機で吸っちゃうんですよね・・・。
小さいから。