Amazonプライム・ビデオで『獣道』視聴。
オズワルドの伊藤が、家族で妹の主演映画を見たんだけどヌードシーンがあって困った、みたいなことを話していましたが、この映画のことでしょうか。
伊藤沙莉がいろいろな役をこなす短編映画を次々と見せられているような感がありますが、彼女が演じているのは一人の女性で、なおかつ実話をもとにしている、ということです。
親ガチャとはよく言ったもので、それに失敗すると「獣道」しか待っていないというのを見せつけてきます。
母親(広田レオナ)が、まーひどいですね。
宗教にハマる人というのは、ああやっていくつも渡り歩くものなのでしょうか。
アルピニストの野口健さんのお母様も、某新興宗教にハマってしまい、それが理由でご両親は離婚されたそうですが、数十年ぶりに再会したら、まったく違う宗教を信じていて、野口さんがそれを詰問したら、「ああ、あれ、間違ってた。」と言われたとか。
それはさておき、本作は、宗教にハマった親から、半ばは育児放棄のようにして教団施設に送られ、そこが封鎖されると行き場を失い、風俗の世界へ。
そしてそこからAV女優で成功するという流れですが、どこからどこまでが実話なのでしょうね。
ある意味成功譚と言えなくもないのでしょうが、まったくそうは見えません。
扱うテーマは重いのです。
ストーリーは表面上、愛衣(伊藤沙莉)と亮太(須賀健太)の純愛モノ的に仕上げようと努力していますが、題材が題材だけに、無理はあります。
その無理さを承知で、エロ・グロ・ナンセンス風味な味付けを施しつつ、フェラーリだとか不良同士の抗争だとかいった映像の疾走感でカバーしようとしている監督の努力を感じ取るべき作品かもしれません。
でも、それらの表面上の動きが激しければ激しいほど、その裏の地方都市の閉塞感のほうが意識されてしまうのですね。
愛衣も変化していくのだけれども、その変化の仕方も定形に沿っているというか。
地方都市の下流ならではの、そこから逃げることができるわけでもなく、人生の選択肢の少なさから、ああ、そっちに行ったか、と観客も含めて納得させられてしまう展開の連続です。
その様は、見ようによっては伊藤沙莉のコスプレ集みたいな感じですが、それらの逐一は背景だとか経緯だとかが深く説明されることもなく、淡々と進みます。
監督としては、「まあ、わかるでしょ?」ということかもしれません。
実際、わかりすぎるくらいわかってしまうのですが。
作品の中では、節目節目でタイミングよく愛衣と亮太が道端で出会い、亮太のナレで「愛衣は変わり果てていた」と触れられる程度なのですけれども。
そもそも、お話の世界とは言え、そんなに接点がないはずの二人が、道端で出会う、ということ自体、地方都市の閉塞感を感じさせますよね。
「私は孤独なのではなく孤高なのだ」と言う彼女がたどり着いたのがAV女優だった、というのは少々出来過ぎなのですが、それも含めて実話だったとなるともうこちらは何も言えません。
そういう意味では、作品の強度が「実話を元にした作品」という肩書に依っているところはあります。
dTV、U-NEXTでも観られます。