燃え殻『ブルーハワイ』読了。
雑誌の連載からの書籍化です。
相変わらずどこにでもありそうでなさそうな、でも燃え殻さんの周りでならありえそうなエピソードの数々が続きます。
タイトルの「ブルーハワイ」はもちろんかき氷の味から来ています。
かき氷屋のバイトをしていた燃え殻さんから見ても、ブルーハワイ味はあまり売れないものだったようです。
言われてみれば当然ですが、確かにあれは何の味なのかわからない。
かき氷の味なんて、所詮はどれも合成着色料で色付けしたシロップですが、赤・黄は容易にストロベリー・レモンに結びつくものの、青に適した果物はついぞ見つからなかったということでしょうか。
よく考えたら緑のメロンというのも微妙で、メロンの果実の部分はどちらかというと黄色がかっていたりしますからね。
それでもまだ果物に結びつけようという意識は見られますから、許せるところもあります。
ところがブルーハワイ。
青い海と空でハワイ、というのも安直ですが、そもそも果物なり何なりの食べ物に近づける努力を一切放棄しているわけです。
今日日ハワイに憧れる人がどれほどいるかとかいう前に、そりゃまあ、売れないよな、と納得。
というかハワイにブルーハワイ味のかき氷があるのかも疑わしいところ。
でも、今でも大抵の縁日のかき氷屋で、あの青いシロップは見かけます。
なかなかにしぶとい。
そういえば久しくブルーハワイ味を味わっていませんが、味も思い出せません。
実はシロップに味の違いは殆どないという話を聞いたことがあります。
色とそれに紐づいた脳の記憶がそれとなく味覚に違いがあるものとして錯覚させるのだ、みたいな話だったような。
だとすると「ブルーハワイ」はやはり分が悪いのでしょう。
何かの味を想起させるわけでもないので。
ちなみに昔、縁日のかき氷屋で「ハワイアンブルー」味というのを見かけたことがありました。
ブルーハワイから更に捻ったのでしょうけれども、やっぱりあまり売れていなかったような。
話がズレました。
いや、ズレてはいないのか。
一部を膨らませてはいますが…。
こんな味わい深い日常についての切り取りのコラムがずっと続く一冊。
なお、読み終えてもブルーハワイ味のかき氷が恋しくなったりはしません。