Amazonプライム・ビデオで映画『実りゆく』視聴。
「第3回 MI-CAN 未完成映画予告編大賞」で賞をもらったことで「りんご」の映画の本編を撮ることになりました、という出来すぎな生い立ちの作品ですね。
なによりまんじゅう大帝国の二人の演技が素晴らしい。
でも、やはり芸人さんです。
ステージに立つと芸人スイッチが入ってしまいます。
「芸人志望の若者」という設定の役者の演技じゃなく、普通に芸人のステージになっているのですね。
話としては、吃音を抱える主人公だけれども、事前に覚えた言葉は淀みなく言えるという特性を持っていることに気づいたことから、仕込んだネタをステージ上で披露して人を笑わせる芸人という仕事を目指す、というもののはずです。
しかし、お笑いのステージで淀みなく言えるどころか、素人以上にうまくなっちゃってるのです。
映画での演出の都合上、ステージの場面は、ネタが途中で途切れたり途中から始まったりするのですが、それを残念に思うほどです。
この漫談・漫才をずっと見ていたいと思ってしまうのですが、これは映画として成功なのか失敗なのか…。
でも、その結果として、まんじゅう大帝国のステージを見たい、という人が増えるのであれば、タイタンとしては成功ということでしょうか。
映画のストーリー自体は、家業を持つ家の父と子の葛藤を、きれいにまとめた感じです。
長野県松川町の風習とりんご農家の生活を、主人公の東京で芸人になりたいという夢を対比させていき、最後の地元の神社での即興ステージがハイライトです。
冷静に考えると、話としておかしなところはいくつもありますが、そういうのも含めてすべてステージでのネタでねじ伏せていく感じが心地よいです。
台風でりんご畑が壊滅的な被害を受けるとか、父が作業中に倒れるとか、そういう演出があるのかと思いましたが、そっちではなく漫才コンビを組むことになる友人を交通事故に追い込んでしまうという、予想外の方向でした。
別にそれで誰かが死ぬとかじゃないので深刻さは無いのですが。
当初、主人公が長野と東京を往復している、という話が出たとき、「今は長野新幹線も出来たから行き来も楽よねー」とか思ったのですが、芸人志望の設定なので高速バスでした。
ま、そうなりますね。
移動の場面はいずれも昼間で、夜行バスでなかったのは、芸人のステージが夜だからでしょうか。
移動中の絵として、深夜に夜行バスの中で一人ふさぎこむ、みたいなシーンがないのは、意図的だったのか知りたいところ。
映像に暗さがない。
その明るさは、相方となる友人に何度となく「覚悟はあるのか?」と尋ねられているところとも併せ、りんご農家という道も芸人という道も、選びきれない主人公の軽さを象徴しているような気はしました。
不必要にウエストランドがディスられていたり、日本エレキテル連合の人の素顔を見られたり、小野真弓がきれいなお母さん(故人)役でもうそんな歳なんだなと感慨深くなったり、色々と楽しめます。
dTV、U-NEXTでも観られます。