兼近大樹『むき出し』読了。
EXITの兼近くんの自伝的な小説。
文春砲を食らった人が、文春で「その辺の経緯をまとめてみましたので読んでください」とばかりに書き下ろしで自伝出版をするという新しいスタイル。
嫌いじゃないです。
究極のマッチポンプですが、どうも複雑そうな家庭環境とか、ちょっとしたインタビュー記事じゃ語り尽くせないし、理解もされないとなると、こういう形になったのは自然な流れなのかもしれませんね。
例えばWikiにも出ている断片的な事実はこの程度で。
2019年9月5日発売の『週刊文春』において、当時未成年だった2011年に売春防止法違反容疑で逮捕され、簡易裁判で罰金刑5万円の処分を受けていたことと、その翌年に窃盗事件に関与した容疑で逮捕されたことが報じられた[1]。文春の取材に対して兼近は売春防止法違反容疑の件については事実を認めているが、窃盗事件に関与した件については否定している[1]。
あまり素性はよろしくないのだろうな、というのはうかがい知れるものの、もちろんこれだけでは背景もわからないわけで。
彼自身は、その売り出し方も、別に「札幌でブイブイ言わせてたワルなんですー」というキャラではなかったですよね。
でも、笑っているときでもなんとなく目つきが冷めているというか、怖さを感じさせるタイプで、この砲が炸裂する前から何となく警戒していました。
子どもの頃に遭遇していたら、絶対に目を合わせてはいけない、関わってはいけないタイプだな、と。
で、本書を読み進めていったわけですが、ワルっぽいとかいうレベルを超えていました。
少し道を外しかけたけどホストで成功して芸能界への道がひらけて、とかいうパターンですらありませんでした。
貧困の中で生まれ育ち、問題はすべて暴力で解決してきた口。
中学卒業後、職を転々としながら、それでも成り行きで売春組織の頭目だったり、バーの共同経営者だったりになって。
そしてパクられ。
でも、警察の人からも「札幌を出て他の道を進め」、と助言されるほどには魅力・人望があり。
結局、共同経営者に嵌められて、窃盗事件の犯人にされそうになったことで踏ん切りが付き上京したと。
上京後の話は極めて短く、「普通」の感覚・感情をまったく持ち合わせていなかったと自称する彼が、どのように芸人としての能力を磨いていったのか。
そのあたりの話はかなり割愛されています。
関心があるのはそこだったりしますが。
読後に感じるのは、彼に「成り上がった感」が無いこと。
こんな逆境の中でもオレはやってやった、というマウンティング要素が皆無で、これは世代なのでしょうか。
映画化希望。
ただ、誰を主演とするべきかは、悩みますねー。