古野まほろ『事件でなければ動けません』

古野まほろ『事件でなければ動けません』 評論

古野まほろ事件でなければ動けません』読了。

副題が「困った警察官のトリセツ」とあり、正にハズレの警察官に当たらないようにするにはどうしたらよいか、もしくは当たってしまったときにどう対処するか、というノウハウを書いた本です。

著者は元警察官僚で現在は小説家とのこと。
実は本書を読むまで存じ上げませんでした。スミマセン。
SF的なミステリーを得意とされている方のようです。
経歴は東大法学部卒、リヨン第三大学法学部修士課程修了、とあるのでキャリア官僚として警察庁に入り、数年後に役所のお金で留学、のパターンでしょう。
かつての同級生でも同様のケースを見ました。
メーリングリストやフェイスブックで、留学先での様子を逐一イキりながら報告してくれていたのでよく覚えています。
奥さん同伴での留学で第二の学生生活を満喫してました。
フェイスブックでは、しばらくして彼のそんなイキり投稿も見ないなーと思ったら、いつのまにかフレンドでは無くなっていた、という残念な出来事がありましたけれども・・・。
向こうからフレンド申請をしてきたのにあんまりだぜ、と思いましたが、当時は自分もリタイアしてすぐのころで、マウンティング要素の強い投稿を繰り返していたので、気分を害したのでしょう。
平日に子どもと遊んでいるオレ、とか平日の昼間からジムに行っちゃうオレ、とかですね。
リタイアすると皆最初に通る道です。スミマセン。
まあ、だったらミュートとかにするくらいで、わざわざフレンド解除までしなくても良いのに、と思ったりもしましたが。
でも、昔から彼には少しそういう器の小さいところがあったな、と納得もしたのでした。
ひとつ象徴的なエピソードがあります。
彼は学生時代、「踊る大捜査線」にハマっていました。
後に警察キャリアを目指すことになったのも、その影響が強かったと思うのですけれども、そこは本人に確認を取ったわけではありません。
私は、学園祭でクラブ(踊るほう)を企画・運営していたのですが、DJをしていた私のところに「これかけて!」と彼がそのサントラCDを持ってきたことがありました。
テクノじゃないので少し躊躇はあったのですが、まあ、学園祭だし別に拒む理由も無いか、ということであのテーマ曲「リズム・アンド・ポリス」をかけたらこれが異様にウケまして。
フロア、というか駒場のとある教室なんですけど非常に盛り上がったのですね。
そしたら、それが気に食わなかったのかすぐに「やっぱ返して!」と。
まあ、いいんですけど。
そういう奴でした。

話がズレました。
「警察官のトリセツ」の話でした。
警察は事件でなければ動けない、というフレーズで思い出すのはやはり「桶川ストーカー事件」ですが、本書でも触れられています。
警察内部でも相当にショックな出来事であったことが、当時現役の警察官僚だった著者の目で語られています。
この事件を受け、警察も法改正を通して組織的に改善が図られたはずですが、退官後、著者が市民として日々生活するなかで、いや、そうでもないぞ、問題があるぞ、というところから、本書の企画は始まったのかな、という感じがします。

著者が一般市民として実際に接することになった警察官の対応について、疑問が大いにあるというか、勘弁してくれ、と感じたエピソードがいくつか書かれています。
ただ、ご本人でも触れていますが、それらの事故・事件の数々。
身内の方が警察のお世話になる頻度が高いんですよね。
本当かな、というくらいに。
もちろん親戚の中で、「あの叔父は元警察官だから」ということで何かあれば頼られるということはありましょうけれども、それにしても自転車同士で事故ってカツアゲとか、山手線の中でドアからドアに吹っ飛ぶくらい殴られるとか、結構なレアケースですよね。
いや、嘘だろ?とか言いたいのではなく、こういう事例をあげるのに事欠かないトラブルに見舞われる星の下にあるというか、小説家になる人にはネタの神様が憑いているのかな、という感が無きにしもあらずです。

という経緯ときっかけはともかく、本書の内容の肝心の部分、警察官を動かすためのトリセツに関しては、至極まっとうなことを言っています。
一応警察なので24時間対応だけど、通常の営業時間内のほうが丁寧に相手にしてもらえるよ、とか、
弁護士同席で相談するのは良いけど、その弁護士が民事専門だったら戦力にならないんじゃないの、とか、
少なくとも警察官は依頼者の敵ではないので、喧嘩腰や詰問調はやめましょう、とか。
技術論も多少はありますが、警察官も人間で、仕事でやっていることなのだし、そこを踏まえた上で話をしましょう、ということですが、いざ自分が犯罪に巻き込まれたらそんな冷静な判断が出来るかなぁ、と思ったりも。

警察に相談事ができたときには、署に出向く前に読み返したい一冊。

古野まほろ本

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