堀正岳『知的生活の設計』読了。
先日の『ライフハック大全』に引き続き、kindleunlimitedで入手。
続編として読むとかなり肩透かしを食らいそうで、Amazonレビューでも、その手の内容を期待した人からの「おもてたんとちがう」的な書き込みも散見されます。
新しいアプリの紹介や効果的な使い方の解説などを求める向きには、少しあてが外れたのかも知れません。
とはいえ、著者とすればタイトルに「ライフハック」という言葉はなくその代わりに「知的生活」という言葉が載っているあたりから、狙い・思いは伝わっていてほしかったところではあるでしょうが、どうしても「ライフハック2」的な内容を期待してしまう層はいて当然かもしれません。
ただ、「ライフハック」を突き詰めるにしても、「何のために」が欠けると自分でも何のためにやっているのかわからなくなりますからね。
そのあたりを整理・棚卸しをするのにも役立ちましたし、著者自身も自身のために一度は書いておきたかったことなのだろうと推察します。
それに、こういうメタな内容は普段のブログでの記事にはそぐわないものかもしれず、ブログとは別にこういうキンドル本として出版した、ということなのかもしれません。
逆に言うとそういうメタな心構えと、副題にもあるような「10年後の自分」を見据えた知的営為というあたりが、日々のブログでのライフハック記事でも、上滑りにならない、巷の意識高い系の書き手と一線を画すところなのかな、と。
参考になったのは、こういった「知的生活」術の系譜についての解説部分。
「知的生活」というからには普段の生活と切っても切れないものですが、旧来のこの手の本が主張する知的生活の営為が、その前提として、かなり家父長制に依っている、とか、家族の犠牲の下に成り立っている、とかいうあたり。
書斎を用意することすらも、家族の同意を得て初めて前に進める事項であるというのは、都会で暮らすにあたっては、現代では当然のことでしょうが、そういうことは言われないと意識できないものですね。
それに、100坪の家があって初めて成立する環境での活動を説かれてもあまり参考にならない、というのは頷けます。
また、家族をもったからには家庭人としての生活も加味しないといけないわけで、これまでの議論では半ばは無視されてきた子育てが「知的生活」に及ぼす影響についての部も参考になりました。
自分自身は、子どもが出来てからすぐにサラリーマン稼業を引退したので、人よりは影響が少なかったとはいえ、それでも子どもが幼稚園に入るまでの間は、読書量が格段に減りました。
今でも、宿題の面倒を見たり、習い事の送り迎えをしたりと、夕方以降はあまり時間が取れないと言えば取れていません。
自分はそんなに器用な方ではないので、サラリーマンを続けていたらこんな生活は無理だったろうと感じることもあります。
そういった事情ももちろん飲み込んだ上で、知的生活のために子どもを持たない生活をすると合理的に判断する人のことも分かるが、子育てって合理的なものじゃないから、という著者の意見には賛成です。
寝かしつけに苦労しながらも、寝息と寝顔に幸せになることってありますからね。
そしてその余韻に浸りながら、この文章の大半を書いていたりするわけですし。
というわけで、ノウハウ本ではないので読む人を選びますが、各種のツールやアプリを使って日々の業務を効率化することに、何か物足りなさを覚える瞬間がある人にはおすすめの一冊。